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賀詞交歓会から新年経済展望 物価高、人手不足を懸念 石巻地方

 石巻市と石巻商工会議所が6日に同市千石町の石巻グランドホテルで開いた新年賀詞交歓会。経済、行政関係者ら540人が集い、企業経営陣らが2025年の地域経済の先行きを占った。新型コロナウイルス禍に伴う経済の落ち込みから脱却し、業績の改善、景気回復への期待が高まる一方、参加者からは物価高騰や深刻な人手不足、20日に就任するトランプ次期米大統領の政策の影響を懸念する声が相次いだ。(浜尾幸朗)

企業トップや行政関係者らが地域経済発展に向けて決意を新たにした石巻市の新年賀詞交歓会=6日

 石巻地方の企業が直面している大きな課題は、原油や原材料の高騰、人手不足だ。「ガソリン価格上昇でマイカー利用者が遠出を控えている」。石巻市内でガソリンスタンドなどを営む企業関係者は厳しい現状を冷静に受け止める。

 造船業のヤマニシ(石巻市西浜町)の鈴木正己代表取締役は、原材料高騰について「やむを得ない。それよりも賃上げによる雇用の確保が必要。技術系職員を採用し、コスト高、円安の流れを見ながら地道に事業を展開する」と語った。

 人材確保に注力するとの声は、ほかにも聞かれた。「若者が高校卒業後、仙台や東京の企業に就職し、地元に残らない」と危機感を示すのは、石油・高圧ガス販売のカガク興商(同市三ツ股)の伊藤武彦社長。「以前は販売促進に力を入れたが、人手不足の現状を踏まえ、人材の確保に重点を置いている」

 東日本大震災から間もなく14年。最大被災地の石巻市では復興のハード事業完了に伴い、公共投資が激減している。ある金融機関の関係者は「地域経済への影響は大きい」と分析する。

 東北の景気が「まだ足踏み状態」とされる中、石巻市などの地方都市経済は好転に向かうのか-。同関係者は今後の見通しについて「トランプ氏の大統領就任後、公約している輸入品への高関税が実施されれば、日本国内の経済への影響は必至。地域経済の先行きは不透明だ」と語った。

 県内では10月以降、宿泊税の導入が見込まれる。石巻観光協会会長で、石巻グランドホテルを運営するソーワダイレクト(同市千石町)の後藤宗徳社長は「国内客やビジネス、個人旅行が少なからずマイナスの影響を受ける」と指摘する。その一方「インバウンド(訪日客)への影響はない」とみている。

 「訪日客は着実に増えており、今年は(石巻地方への誘客を)大幅に増やしたい。石ノ森萬画館や田代島の猫、震災遺構を(観光コンテンツの)柱に、より情報発信に力を入れることが求められる」と後藤氏。「(観光関連の)事業者が独自に情報を発信して地道に一つ一つ積み上げていくことが必要だ」と力を込めた。

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