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子育てと介護の縁側・今日も泣き笑い > 特別編 座談会(1) 介護、もっとオープンに

介護への思いについて語り合う(左から)河瀬さん、柴田さん、大森さん、秋田さん=石巻市の三陸河北新報社
柴田礼華(しばた・あやか)さん、1980年10月山口県長門市生まれ。結婚後、石巻市に移り、夫が代表を務めるNPO法人にじいろクレヨンを手伝い、子どもの居場所づくりなどに取り組む。2024年7月からコラム「今日も泣き笑い」を連載中。石巻市のぞみ野1丁目在住。
大森宗憲(おおもり・そうけん)さん、1969年10月石巻市生まれ。自宅がある同市清水町1丁目で茶道教室を主宰。家業の燃料店を手伝う傍ら茶道を始め、助教授の資格を取得した。父の介護に悩みながら、前向きに楽しむ姿を伝えたいと講演活動に取り組む。
秋田仁(あきた・ひとし)さん、1970年2月浜松市生まれ。95年に医療法人社団仁明会(石巻市)に入職。介護老人保健施設などの介護員を経て、2022年6月から青葉居宅介護支援事業所で現職。在宅介護に関する相談や計画、連絡調整に従事する。涌谷町在住。
河瀬聡一朗(かわせ・そういちろう)さん、1978年1月川崎市生まれ。東日本大震災直後から被災地で巡回診療を行い、2012年6月から現職。訪問診療も行い、医療介護の多職種連携に取り組む。家庭介護に奮闘する男性を支える「男の介護教室」代表。仙台市在住。

 高齢化社会の進展に伴い、介護は誰もが避けられない課題でありながら、ネガティブな印象を持たれがちだ。家庭介護の支援に取り組む石巻市雄勝歯科診療所所長の河瀬聡一朗さん(47)が司会を務め、石巻かほくで介護と子育てをテーマにしたコラム「今日も泣き笑い」を連載中の柴田礼華さん(44)、父親を介護する大森宗憲さん(55)、介護支援専門員の秋田仁さん(54)の3人が、各家庭での状況やその思い、地域の現状について語り合った。(4回続き)

◇出席者 「今日も泣き笑い」筆者  柴田 礼華さん 
     茶道裏千家助教授     大森 宗憲さん 
     介護支援専門員      秋田  仁さん 
◇司 会 石巻市雄勝歯科診療所所長 河瀬聡一朗さん

-家族構成を教えてください。

 大森>父(89)、母(85)、姉(60)と私の4人家族です。認知症で要介護5の父を8年間、私と姉が介護しています。訪問入浴サービスと訪問看護、訪問診療を利用しています。

 柴田>義父(86)、義母(87)、夫(49)、長女(5)、次女(1)と私の6人家族で、義母を5年間介護しています。義母はデイサービスを週5回利用して介護度が2から1に改善されました。ただ、残存視野が10%しかなく、認知症による幻覚も増えており、介護度の見直しをお願いしようと考えています。 
 義父は要支援2で、デイサービスを週2回利用しています。リハビリと介護予防が中心です。つえなしでは歩けなかったのが、ある程度のことはできるほど回復し、高齢でも回復の余地があると実感しました。

-デイサービスを利用して家族の負担は。

 柴田>確実に減りました。私たち夫婦が留守中、義母が家の外に出てしまい帰れなくなったのを機に、命を守るために使っています。

 大森>わが家は「家族がほっとする時間をつくれる」と勧められて利用しましたが、環境の変化で父が不安定になるのでやめました。入浴は当初、シャワーで介助していましたが、湯舟に漬かると熟睡できるので訪問入浴を利用しています。

-施設への入所は考えなかったのでしょうか。

 大森>8年前、徘徊(はいかい)が悪化して施設に預かってもらいました。家族は楽になりましたが、2年後に自宅に連れ帰りました。 
 施設に洗濯物を取りに行き、促されて面会したら、父がだまって手をぎゅっと握るんです。帰りたいと訴えているようでした。父とは長年折り合いが悪かったのですが、このままでいいのかと自問し、家で最期を迎えてほしいという感情が湧いてきました。

 秋田>介護施設が洗濯物の受け渡しや支払いを手渡しで行うのは、面会の機会をつくる狙いもあるんです。

-柴田さんの場合は、介護するのが義理の両親です。抵抗感は。

 柴田>義父母は結婚前からかわいがってくれ、血のつながりはなくても家族という意識です。私の妹は障害があり、手助けが必要な人がいるのが当たり前の環境で育ったこともあり、それらを含めて「暮らし」と受け止めています。

-介護はネガティブなイメージを持たれがちです。

 大森>家庭で介護していることを隠したがる風潮が気掛かりです。大人用紙おむつを買っていると、見てはいけないものを見てしまったような顔で「誰にも言わないわよ」と知人に言われることがあり、残念に思います。 
 父の介護について発信することで、介護に悩む人たちが楽になるのではと考え、講演活動を始めました。介護についてオープンに語れる地域社会にしたいですね。

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