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石巻・津波伝承館、初の小学生解説員デビュー 仙台の田中さん、家族の体験通じて関心

 石巻市のみやぎ東日本大震災津波伝承館に、小学生では初のボランティア解説員が誕生した。仙台市泉区のホライゾン学園仙台小の3年田中杏さん(9)は震災後生まれだが、家族の経験談や遺構の見学を通じて関心を高めた。次世代への伝承を担う県の「ジュニア解説員」に認定され「避難の仕方や防災の備えを伝えたい」と意気込んでいる。

 杏さんは、仙台市内で被災した母かおるさんから「地震の揺れでキッチンの鍋が玄関まで飛んだんだよ」などと当時の経験を聞いて育った。7歳の頃に初めて亘理町の震災遺構を訪問。かおるさんは当時の杏さんの様子を「壊れた建物に衝撃を受けていた。津波の怖さを肌で感じたのだと思う」と振り返る。

 「この家に津波は来る?」。杏さんは度々尋ねるようになった。家族旅行で立ち寄った道の駅では、展示されていた被災地の写真に引き寄せられていたという。クラスメートの誘いをきっかけに昨年6月、ボランティア解説員に応募した。

 研修は7~10月に計5回あった。館内の展示を説明するため、津波の高さや速さなどを学んだ。「津波は背の高さぐらいだと思っていたのでびっくりした」と杏さん。関連用語を覚えようと、研修テキストの音読を重ねた。最初は耳慣れなかった「東北地方太平洋沖地震」という名称も、すらすら話せるようになった。

 得意の英語を使った案内にも挑戦する。昨年10月に伝承館で認定テストに臨んだ際、ヨーロッパから旅行中の男性が来館した。練習していた英語で解説すると、真剣な表情で聞いていた男性が「よく分かりました」と英語で伝えてくれた。

 解説員の認定式が今月2日、伝承館であり、一緒に応募したクラスメートと2人で認定書を受け取った。杏さんは今後、月1回のペースで解説員として活動する。「人の役に立つ案内をしたい。津波が来たら高い所に逃げたり、災害に備えて食べ物や水を備えたりすることを伝える」と力を込めた。

 ボランティア解説員は小中高生、大学生、専門学校生が対象。県と東北大災害科学国際研究所が次世代の震災伝承の担い手を育成しようと随時募集している。これまで10人が認定を受け、最年少は昨年10月に就任した中学1年だった。

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