いしのまき食探見 > くるみ豆腐 伝統の味、和スイーツに

海と山とで育まれる豊かな石巻地方の食材。伝わる文化と技を生かした郷土の「食」を紹介する。
くるみ豆腐
ぷろぷるとした舌触り。口に運ぶと、濃厚なクルミの甘さが広がる。豆腐造り処させい=石巻市相野谷=のくるみ豆腐は、石巻地方伝統の法要料理「平椀(ひらわん)」に欠かせない食材として、長年にわたり親しまれている。
すりおろしたオニグルミに葛(くず)や砂糖を加えて大鍋で火にかけ、40~50分かけてじっくりとペースト状に練り上げる。木型に流し込み、余熱が取れたら出来上がり。
「気温などの天候条件によって火加減を微調整しています。砂糖など材料の比率は、お客さんの嗜好(しこう)の変化に合わせて変えていますが、製法そのものは創業当時のままです」。3代目の佐藤清正さん(70)が解説する。
創業は1934年。長らく豆腐や油揚げ作りにも取り組んできたが、佐藤さんが3年ほど前、くるみ豆腐とごま豆腐の製造・販売に絞った。
従来の仕出し店などに加え、近年は道の駅やスーパーにも販路を広げる。若年層が手に取りやすいよう、容器や包装をスイーツ風に一新。日本茶にもコーヒーにも合う「和スイーツ」として、立ち寄る観光客らがまとめ買いすることもある。
平椀が精進料理であるという食文化を伝えようと、包装紙に「精進」の文字を入れた。「先代が精進を重ね、くるみ豆腐を受け継いできた歴史も込めています」と佐藤さん。伝統を守ってきた自負と、継承への決意をにじませた。
(都築理)
<メモ>
石巻地方ではさせいなど3軒ほどがくるみ豆腐を生産する。させいの商品は、店頭のほか道の駅「上品の郷」「東松島」、石巻市のいしのまき元気いちば、グリーンサムいちば、「ウジエスーパー」の一部店舗で購入できる。させいの連絡先は0225(62)2606。
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