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震災経験、東海で伝える 石巻出身の名大4年岩倉さん 門脇小で被災、自宅失う

名大で開かれた防災イベントで発表を行う岩倉さん            =1月11日(3.11メモリアルネットワーク提供)

 小学生の時に石巻市で東日本大震災を経験し、進学した大学がある東海地方で語り部の活動に取り組んできた大学生がいる。名古屋大4年の岩倉侑(あつむ)さん(22)。4月から勤務する鉄道会社でも経験を生かしたいといい、「災害後のインフラ復旧に携わり、被災した方の生活をいち早く取り戻したい」と力を込める。

 岩倉さんは石巻市出身。大学進学後、知人に頼まれたことをきっかけに、教育機関や地域の防災に関する会議などで震災の経験を語るようになった。東海地方を中心に4年間で約60回の講演などを行った。

 震災当時は旧門脇小の2年生。教室で大きく長い揺れに見舞われ、校舎裏の日和山公園に避難した。津波で孤立し、両親と再会できたのは地震の3日後。南浜町にあった自宅は土台を残して流失した。蛇田中で約2週間の避難生活を送り、みなし仮設への入居を機に仙台市に引っ越した。

 高校在学中、約30カ国の生徒が防災に関する知見を共有するイベントに出席したことで、災害をいかに防ぐかに関心が高まり、地震工学の権威がいる名大を進学先に選んだ。

 語り部の活動で心掛けていることがある。「東海地方の人が初めて会う被災者が自分かもしれない。伝える情報が災害のイメージに直結する」。一言一言の重みをかみしめ、母校を襲った津波火災の恐ろしさや、避難所生活の過酷さなどを丁寧に伝えてきた。

 震災後、なかなか復興が進まない古里を複雑な思いで見つめてきた。「災害後、住民や地域が豊かになれるかどうかは、いかに早く復旧できるかで変わる。絶対に止まらないインフラはないが、少しでもそれに近づくための行動をしたい」。人々の生活の根幹を支えるインフラ企業への就職を志した。

 4月からJR西日本に勤務し、災害対策などの業務に関わる。「南海トラフ地震で再び被災してしまうかもしれない」という不安もある。それでも「被災した自分が動かなければ、経験が生きない。生き残った責任を果たしたい」。固い決意をにじませた。

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 岩倉さんは8日、石巻市南浜町2丁目のみやぎ東日本大震災津波伝承館で語り部の活動を行う。午前11時からと午後1時半からの2回。9日は伝承館で「3.11トークセッション」に登壇し、「22歳の選択-当時小学生だった私たちの語り継ぎ」をテーマに活動への思いを語る。午後1時半から。いずれも参加無料。

第6回 3.11トークセッション「22歳の選択」~当時小学生だった私たちの語り継ぎ~ | 3.11メモリアルネットワーク

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