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町長バンド、活気呼ぶ イベント盛り上げ 女川ゆかりのアイドル曲、歌い継ぐ

バンドを率いる須田町長。ギター・ボーカルを担当している=2月23日

 女川町長の須田善明さん(52)率いるアマチュアバンド「NEMPiRE(ネンパイア)」が町内のイベントへのボランティア出演を重ね、東日本大震災からの復興へ向かう町に活気をもたらしている。主に女川ゆかりのアイドル曲をカバー演奏し、ライブに欠かさず駆け付ける熱心なファンもいる。

 多忙な公務を縫って活動を続ける須田さんは「女川に来てくれる人を楽しませたい」と意気込みを語る。(都築理)

野外ライブを行うNEMPiREのメンバーら。熱心なファン約100人が詰めかけた

 「寒いけれど盛り上がっていきましょう」。2月23日、同町の「シーパルピア女川」で開かれた野外音楽フェスティバル。ギターを手に須田さんが呼びかけると、集まった約100人がこぶしを突き上げた。大半が町外からの来場という。

 東京都八丈町の飲食業忠海和哉さん(56)は毎年この時期、旬のカキを味わおうと女川を訪れており、同日は音楽ライブも堪能。「町長が先頭に立って盛り上げている。面白い町だ」と話した。

 バンド名は町ゆかりのアイドルグループ「EMPiRE」(エンパイア)へのオマージュ。震災以降、町は東京の音楽事務所「WACK(ワック)」との交流を深め、エンパイアなどの所属アイドルが町内でライブを重ねてきた。

 「自分たちも盛り上げに一役買いたい」。そんな思いから、須田さんら町民有志が2019年、バンドを結成。町内外のイベントでエンパイアや「BiSH」(解散)などワックのアイドル曲を演奏している。バンドの名前には、町長らメンバーの多くが「年配」との意味も込めた。

 ライブの曲目には、既に解散したグループの楽曲も多くある。ワックアイドルのファンでもある忠海さんは「本人たちの歌唱では二度と聴けない曲ばかり。(聞くと)懐かしくて涙が出る」。そんなファン心理でライブに通う人も多いようだ。

 メンバー約10人の仕事は公務員、会社員、自営業などさまざま。震災後に移住してきた人もいる。

 ボーカル岩部莉奈さん(28)もその一人。宮崎県出身で、移住希望者の支援などに取り組む同町のNPO法人「アスヘノキボウ」で広報を務める。「自分も移住者なので、町外の人が女川を楽しんでいる姿を見るのがうれしい。音楽をきっかけに、町のさまざまな魅力を知ってもらいたい」と張り切る。

 アイドル側もバンドの活動を歓迎している。BiSHの元メンバーで、歌手や俳優として活動するアイナ・ジ・エンドさん(30)は「自分たちの音楽が解散後も歌い継がれているのがうれしいし、ありがたい」と話す。

 バンドの次のステージは、23日の「おながわ春のまつり」。須田さんは「アイドルファンが何度も女川を訪れ、名物の海鮮を食べたりおみやげを買ってくれたりしたことが復興の一助になってきた。これからも足を運んでくれるファンたちを楽しませたい」と語った。

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