「復興再考」第8部 なりわい(4) 復旧の先/課題直視 新たな道開く

グループ化補助金を活用し、カフェを併設した洋品店を経営する小笠原さん=1月14日、岩手県陸前高田市
「水産加工会社らしくない」外観に仕上げた木の屋石巻水産の美里町工場=宮城県美里町

 美しい曲線を描く屋根とガラス張りの外壁。田園地帯に突如現れたのは「復旧の先」の象徴だ。

 水産加工会社「木の屋石巻水産」(宮城県石巻市)が宮城県美里町に構える工場は、クジラやサバの缶詰を仕上げる製造拠点には到底見えない。「『美術館でもできるのか』って、近所はざわついたようです」。営業部課長兼広報担当の松友倫人さん(41)が笑う。

 同社は東日本大震災の津波で石巻の本社工場が全壊した。被災企業を支援するグループ化補助金で再建するに当たり、製造工場は内陸の美里町に新設し、石巻の工場は魚の下処理を中心とすることを決断。2013年に両工場を建設した。

 水産加工会社らしくない立地と外観を選んだのには、理由がある。

 同社は被災経験の発信にも力を入れ、社員が各地を訪ねてきた。過去に災害を経験した兵庫や新潟などの経営者から、同じような言葉を耳にしている。

 「被災前の課題を解決する復旧をしないと、5年くらいでつぶれるよ」

 水産の街・石巻で、関連業種は以前から人手不足に苦しんでいた。「会社の存続には働く人が必要。水産業や水産加工会社で働くイメージを変えたかった」と松友さんは説明する。

 会社の「中身」の認知度向上にも力を入れてきた。木の屋の売りである、当日水揚げされた魚を缶詰にする鮮度重視の製法などを、会員制交流サイト(SNS)で積極的に発信。昨年12月には若者に人気の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」への投稿を始めた。

 震災前の10年12月期、15億円台だった売上高は19年に21億円を超え、従業員は倍近い100人余りに増えた。20年は新型コロナウイルスの影響で土産物需要が縮んだが、通販が倍増し19億円台で踏みとどまった。

 震災の打撃からの劇的な復活。懸念は石巻の水産関連業者の減少だ。魚市場での買い付け力が弱まれば地盤沈下は避けられない。「『復旧』はできた。『復興』には地域全体での水産業活性化が必要」。松友さんは将来を見据える。

 洋品小売店の東京屋(陸前高田市)は津波で店舗が流失した。プレハブ店舗などを経て17年、中心市街地に店舗を再建する際、新たにカフェを併設した。活用したグループ化補助金は15年度以降、原状復旧だけでなく新分野事業への投資も認められるようになった。

 洋品と飲食の多角経営は、2代目店主の小笠原修さん(59)が学生時代から温めてきた構想だ。補助金申請時の事業計画では、冷静に現実を直視した。いや応なく進む人口減少で、洋品の売り上げが毎年5%下がることを前提に「減収分を補う買い物と食事の相乗効果を狙った」という。

 三陸沿岸道の整備が進み、陸前高田では震災前から続く買い物客の流出が加速する。小笠原さんは仲間の事業者とともに、市民向けに教室を開く「まちゼミ」にも力を入れる。

 「一店一店を光らせて勝負する。街の魅力を高め、交流人口を増やしたい」

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