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「デジタコ不正、過労運転が常態化」 宮城のトラック運転手、労働実態を証言

会社がデジタコ不正を指示したとされるスマートフォンへのメッセージ(写真を一部加工しています)

 「トラックのデジタル式運行記録計(タコグラフ、通称デジタコ)を不正に使用し、過労運転が常態化していた」。宮城県南部の40代男性運転手が過去の勤務先で重大な交通事故につながりかねない労働の実態があったと「読者とともに 特別報道室」に証言した。

 男性が最近まで勤務していたのは、県外の運送会社が県南部に置く営業所。運行記録計の装着が義務付けられた大型トラックを運転中、国の基準に従い継続8時間以上の休息時間を確保したように装うため、日常的にデジタコを不正使用していたという。会社からの指示もあったとされる。

 男性が書き留めていた運行記録と証言を基に、昨年夏のある日の動きを追うと、次の通りだった。

 午前10時30分、デジタコの出庫ボタンを押し、新潟県を出発。荷物を積み込み、翌日午前1時15分、大阪府に到着、デジタコの帰庫ボタンを押す。仮眠した後、同日午前6~8時、本来必要な出庫ボタンを押さず、確認を求める警告アナウンスを無視したまま荷降ろし作業を行う。同日午前9時45分、出庫ボタンを押して次の行程に向かう。

 この日の実際の休息時間は4時間45分だが、デジタコでは8時間30分となる計算だ。

 男性は「休息に入ってすぐ寝付けるわけではなく、2、3時間睡眠の日が3、4日続くこともあった」と話す。睡眠不足のため運転中に意識がもうろうとなり、家族をはねる幻覚を見たこともあるという。

 会社側は河北新報社の取材に対し、労働基準監督署から昨年11月、是正勧告を受けたことを明らかにし「既に改善している」と説明。今年1、2月の2回、是正報告書を提出した。

 同社幹部は物流業界の人手不足を背景に「ルールを守ると、ドライバーから『稼げなくなった』と言われる。どんどん辞めるだろう」と嘆く。トラック運転手の労働時間を定めた国の基準について「運転手が休みたくない時に休まされ、眠いのに休めない時もある」と話し、運行効率とのジレンマを訴えた。

[メモ]デジタル式運行記録計は車両の走行距離や時間、速度などを自動的に記録する装置で、事故防止や労務管理に有効として国が普及を促進している。運行記録計による記録違反(改ざんなど)には車両の使用停止といった行政処分がある。トラック運転手の過労運転防止に関する国の改善基準告示は(1)1日の拘束時間は原則13時間以内(2)休息時間は継続8時間以上(3)連続運転時間は4時間以内-などと定めている。

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