【焦点】診療看護師、地域医療の切り札に 医師の指示待たず点滴、床ずれ処置

患者の症状をチェックする診療看護師の黒沢さん(右)=3月、宮城県登米市

 医師不足が深刻な東日本大震災の被災地などの課題解決に向け、仙台市の東北医科薬科大病院が、高度な医療技術を身に付けた「診療看護師(NP)」の派遣事業に力を入れている。NPの活用は、患者への迅速な処置や医師の負担軽減など利点が多い。現在、登米市と連携した活動を展開し、高齢化が加速する東北の過疎地からも「地域医療の切り札になる」と期待が集まっている。
(菊池春子)

 「足の痛みはどうですか」。宮城県登米市内の90代女性宅で3月上旬、東北医科薬科大病院のNP黒沢恵美子さん(43)が、女性の症状を聞き取っていた。
 黒沢さんは週1回、医師不足が続く市豊里病院に派遣され、在宅医療を支援している。この日は専門知識を生かして薬の投与量を検討し、医師に提案した。歩行が困難で通院の介助が必要な高齢者が多い中、NPの存在は患者や家族の負担軽減にもなっている。
 2015年以降、一定の条件下で看護師にも医師の指示を待たずに点滴や床ずれの処置など特定の行為が認められた。黒沢さんは「患者の回復のため、素早く対応できるメリットは少なくない」と話す。
 医師不足や高齢化が深刻な地域の医療を支えようと、東北医科薬科大病院と登米市などは17年度、「登米NPプロジェクト」を開始。NPらが豊里病院と特別養護老人ホーム「松風園」などで週1回ずつ活動しており、在宅や施設での活動の先進例として注目を集めている。
 開業医の高齢化が進む中、医療や施設側のメリットも大きい。市の担当者は「地域に根ざして活動するNPは不可欠だ」と強調。松風園では18年度から20年度にかけ、NPによる専門的な支援を受けて以降、通院者の延べ人数が半減した。利用者の状態も落ち着き、職員の負担も減った。
 市もNP育成に力を入れ、昨年度までに市民病院の看護師2人が県内で唯一養成課程がある仙台市の東北文化学園大大学院を修了し、資格を取得した。

 多くの利点がある一方、普及面で課題もある。現段階で、診療報酬に反映される看護師の特定行為は一部にとどまる。プロジェクトを担う東北医科薬科大病院の住友和弘医師(54)は「実績を重ねて必要性を訴えたい」と話す。
 16年の東北医科薬科大医学部新設で、医師の増加が期待される。一方で24年度以降、国が進める医師の働き方改革で勤務医の残業規制が導入、NPの需要はさらに高まる可能性がある。
 新型コロナウイルス感染者対応でNPが果たす役割も大きく、松風園などを訪問する東北医科薬科大病院のNP中川恵子さん(49)は「医師と看護師のつなぎ役として重要性が増すのではないか」と話す。
 NP普及に向け、東北医科薬科大病院は、石巻市立病院と連携した取り組みを検討。医科薬科大病院の近藤丘院長(70)は「NPの認知度はまだ低い。養成や定着のため、住民や医療機関への啓発も図りたい」と強調する。

[診療看護師(NP)]ナースプラクティショナーの略。医師と看護師の中間職で、1960年代に米国で生まれた。日本NP教育大学院協議会などによると、2008年に国内で養成が始まった。3月現在、NPの教育課程の認定を受けた大学院は14校あり、東北は東北文化学園大、山形大、秋田大の3校。実務経験5年以上の看護師が、養成課程を修了し試験に合格する必要がある。これまで450人以上が合格した。

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