福島のモモ農家、風評再燃を懸念 台湾や香港の輸入規制長期化も

モモの枝の生育状況を確かめる古山さん

 東京電力福島第1原発の処理水を海洋放出する政府の方針決定を受け、福島県内で農産物の輸出に取り組む農家に懸念が広がっている。再び風評が広がり、10年にわたり続く県産品の輸入規制措置の長期化が想定されるためだ。特産のモモを輸出する農家は「国と東電は海外に正確な情報を伝えてほしい」と願う。

 「この10年でようやく風評が払拭(ふっしょく)されてきた。この期に及んで福島県民をまた傷つけるのか」

 福島市で果樹園を経営する古山浩司さん(45)は、2年後の海洋放出の方針決定を受けて不安を感じた。

 原発事故は、古山さんが脱サラをして家業を継いだ翌年に起きた。贈答用のモモを購入する顧客は半数に激減。1キロ当たり1000円だった取引価格は20円ほどに買いたたかれたこともあったという。

 付加価値を高めようと、栽培方法の試行錯誤を重ねた結果、糖度は一般的な9~12度を上回る40度に達した。ギネス記録の糖度を武器に2017年、タイの富裕層向けに輸出を開始。19年は初年度の5倍となる約500キロを現地に届けた。

 古山さんにとって、海外は開拓余地の大きい魅力的な市場だ。ただ、処理水の海洋放出で風評が再燃すれば、規制が長期化しかねない。

 県によると、原発事故前はモモとコメが輸出農産物の大半を占めた。事故後、54の国・地域が福島産農水産物の輸入を規制。主要な輸出先だった台湾、香港、中国を含む15の国・地域が現在も規制を続けている。

 海洋放出の決定直後、古山さんは、かつて台湾企業の社長から「当面、輸入の解禁はない」と言われたことを思い起こした。「事故当時のまま認識が止まっている」と感じたという。

 政府は基本方針に販路拡大支援などを盛り込んだが、古山さんは「実際に売れる保証はない」と語る。

 「放出までの2年間で国内外への正確な情報発信は不可欠。国と東電は風評を生じさせないよう全力を注いでほしい」。古山さんは切望する。

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