鳥海山のモービル入山、意見に隔たり

スノーボードを載せたスノーモービルで鳥海山を走る今間さん=由利本荘市

 山形、秋田県境の鳥海山(2236メートル)でのスノーモービル利用を巡り、地元山岳愛好家に波紋が広がっている。春には日本海を見下ろしながら滑降できる絶好のスポット。モービルの普及で入山のハードルが下がり、スノーボーダーが多く訪れるなどしている。賛否両派の意見の隔たりは簡単には埋まりそうにない。

業者「法律を守って活動」

 山形県酒田市に2019年に設立された合同会社「オーガナイズバックカントリー」は、鳥海山を主なフィールドに積雪期はモービルでスノーボーダーのガイドなどを行う。
 各地のスキー場が冬季営業を終える4、5月ごろ、東北内外のスノーボーダーから予約が集中。鳥海山の山形県側の南斜面や秋田県側の北斜面をモービルで駆け上がって客を山頂周辺まで案内、滑降とモービル走行を繰り返す。
 代表社員の今間博憲さん(39)は「海外を知るボーダーは鳥海山を天国みたいな所だと評価する。恵まれた環境をもっと盛り上げたい。モービル禁止エリアには入らず、法律を守って活動している」と話す。
 鳥海山は国定公園で、両県が管理する。モービルの乗り入れ禁止は自然公園法上の「特別保護地区」に指定された山形側の山頂周辺だけ。それ以外は樹木を傷つけるなどしなければ自由に走行できる。
 秋田側は県や地元山岳会、スノーモービル愛好者団体が、特別保護地区の外側「第1種特別地域」まで禁止エリアとしている。今間さんは「地元のルールは尊重するが、法的な根拠はない」と指摘する。

登山者ら「自然に配慮を」

 鳥海山一帯は国の天然記念物で希少種のイヌワシの行動圏でもある。冬から春は産卵やふ化の重要な時期だが、イヌワシ保護の観点からモービルを規制する実効性のある法令はない。
 鳥海山を40年以上撮り続ける山形県庄内町のカメラマン佐藤要さん(71)は「山の楽しみ方が変わってきたのは分かるが、大人数で大きなエンジン音で走り回る行動は他者や自然への配慮が欠けているのでは」と苦言を呈する。他の登山者からも「モービルは迷惑」と怒りの声が上がる。
 山形県遊佐町の登山ガイド佐藤幸也さん(52)は、鳥海山に入るウインタースポーツ愛好家がモービル利用の有無を問わず一堂に会する場を17年から設けてきた。「ルール作りよりもまず互いをよく知るべきだ。現状では、しっかり法律を勉強しているボーダーの方が一枚上手だ」とみる。

介入の根拠なく、行政は二の足

 スノーモービルの利用について、鳥海山の管理に携わる、どの行政機関も積極的な議論に二の足を踏んでいるのが現状だ。介入する決定的根拠がなく、模様眺めの様相となっている。
 鳥海山は自然公園法上の管理が山形、秋田両県に二分されている。自然保護を担う環境省、国有林を保全する林野庁もそれぞれ出先機関を両県に置いて活動している。
 モービル進入禁止の特別保護地区を管理する山形県の担当者は「規制範囲を広げるには環境への悪影響を立証する必要があり、時間も予算もかかる」と説明。山頂のある遊佐町は高山植物などを保護する町条例を定めるが、高山帯などへのモービル進入は想定外という。
 イヌワシの保護活動をする環境省の鳥海南麓自然保護官事務所(酒田市)の担当者は「モービルの騒音による影響について具体的な研究はない。種の保存法で規制すれば登山さえ禁止となる可能性があり、現実的ではない」と言う。
 林野庁は貴重な森林として鳥海山に生物群集保護林を設ける。由利森林管理署(由利本荘市)の担当者は「保護林には入ってほしくない。問題が大きくなれば関係者で対応を考えないといけない」と語る。

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