処理水放出、海外向け情報発信急務 風評「逆輸入」の構図も

 東京電力福島第1原発の処理水を海洋放出する政府方針を巡り、海外で懸念や反発の声が相次いでいる。福島県産食品への輸入規制措置は10年にわたって続いており、関係者は風評被害の再燃によるさらなる状況悪化を懸念する。政府の対策は具体化されておらず、識者からは情報公開の徹底を求める声が上がる。

 「世界中への情報発信に全力を尽くしてほしい」。内堀雅雄福島県知事は4月24日、県庁で平沢勝栄復興相に訴えた。同13日の政府方針決定後、内堀知事は菅義偉首相や各関係閣僚、東電社長と相次いで面会し、同様の要望を重ねている。

 浄化前の「汚染水」と処理水の混同に代表されるように、特に海外での情報発信不足が目立つ。近隣国政府などの発言が日本国内で報じられ、「風評を逆輸入する構図」(学識経験者)も生じている。

 原発事故後、54の国・地域が福島県産食品の輸入を規制した。15の国・地域が継続中で、かつて福島の最重要輸出先だった台湾、香港、中国も含まれている。

 政府は10年間、放射能検査で食の安全を裏付け、外交で輸入規制撤廃を求めた。県も知事自ら現地入りするなど働き掛けを強めてきたが、全撤廃は遠い。県担当課は「政治的事情に加えて情報が十分届いていないのが一因」とみる。

 東京大と福島大が2017年に実施した国際意識調査で、福島の農産物を「不安」と回答した人の割合は台湾で81%、韓国や中国が60%台に上った。検査体制や結果が知られていないことが大きな理由だった。

 10年を経て、県農産物の主要輸出先はタイやマレーシアといった東南アジアに切り替わっている。輸出量はコメとモモを軸に伸び続け、19年度は過去最高の305トンと勢いを見せる。

 県県産品振興戦略課の担当者は「台湾、香港、中国の市場は魅力。ぜひとも輸出を再開したい」と望む。一方、放出方針を受け「(一度解除した国・地域が)再規制に踏み切ってもおかしくない」と不安も口にした。

 政府は基本方針に「国際社会の理解醸成の取り組みを徹底する」と明記。ただ、当面はこれまでの対策を継続させるにとどまり、実効性は不透明だ。

 処理水に関する政府小委員会委員を務めた福島大の小山良太教授(農業経済学)は「政府は方針決定前に国際的な理解を広め、輸入規制を解除させておくべきだった。『汚染水』などと呼ばれていて、これまで何もしてこなかったに等しい」と指摘。「反発され続けたとしても情報公開を尽くし、国内外に理解を広げていくことが大切だ」と話す。

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