宮城の公立高、人気校の定員削減「おかしい」?
「定員割れが続く学校がそのままで、倍率の高い学校が定員を減らすのはおかしい」。宮城県の公立高の募集定員削減を巡り、中学3年の息子を持つ公務員男性(45)=仙台市泉区=が「読者とともに 特別報道室」に疑問の声を寄せた。高校の定員はどのように決まるのか取材した。
(編集局コンテンツセンター・佐藤理史)
1・37倍の泉が定員削減
2022年度の全日制の定員は前年度比320人減の1万3880人。少子化を反映し、横ばいの13年度を挟み24年連続で減った。
定員削減の対象は8校で、それぞれ1学級(40人)減る。名取北、岩出山、岩ケ崎、登米、石巻市桜坂は21年度の入試で定員割れした。美術科を除き定員を満たした宮城野は学科再編に伴い、総定員が減った。泉と塩釜は実質倍率が1倍を超えながら対象となった。
泉の普通科は1・37倍。定員200人以上の学科では宮城一、仙台一に次ぐ高倍率で、89人が不合格となった。公立高の計133学科のうち78学科が定員割れしたことを踏まえ、男性は「仙台圏以外はほぼ全入状態なのに、仙台圏は競争にさらされる。毎年何十人と落ちる子どもたちがかわいそう」と受験生の心情を察する。
定員は県教委教育企画室が検討する。①中学卒業者数の見込み②公共交通機関の状況③学校・学科の配置バランス―などを判断基準とする。柴大輔主幹は「ルールはがちがちに決まってはおらず、総合的な観点で決めている」と話す。
20年度に定めた実施計画によると、泉、塩釜、宮城野を含む中部の中卒者数は19年度の1万3847人と比べ、28年度まで366~943人下回る見込み。柴主幹は「現状は1倍を超えていても、少しずつ減らす必要がある」と説明する。
減らす順番や地域のバランスも考慮しているという。泉区では18年度に泉松陵が、20年度に泉館山がそれぞれ1学級(40人)減った。22年度の泉は一連の調整とみることができる。
郡部の厳しい状況に理解を
ただ、高校受験に詳しい河合塾NEXT本町中学専門館(仙台市青葉区)の進藤誠講師は「泉は進学を目指す受験生に人気で、倍率の高い状態は続くだろう。私立高の実質無償化を背景に、人気の公立高に挑戦する生徒が増える可能性もある」と別の見方を示す。「明確な基準を示し、丁寧に説明しないと受験生はふに落ちないのでは」と推し量る。
中部以外の6地区は定員割れが常態化し、南部と大崎で再編統合が予定される。石巻や登米では「通学圏内で学びの幅を確保する」観点から、農商工などの専門学科がかろうじて残る。
宮城学院女子大の清水禎文教授(教育制度論)は「秋田県は2000年代から、実績に基づき地区ごとに公立高の統廃合を進める。宮城県は適正配置の取り組みが後手に回った印象がある。ビジョンも見えにくい」と指摘する。
その上で「保護者の心情はよく分かるが、子どもは確実に減り、統廃合が進んだ郡部は厳しい状況にあることを理解してほしい。学校は特色ある教育ができている。学校側はその情報をしっかり伝える必要がある」と見解を示す。
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