20代男性のコロナ闘病(下)退院後、体力の落ち込みに驚く

 あれほど落ち込んでいた食欲も徐々に戻ってきた。

 5月の連休、仙台市内の総合病院。新型コロナウイルス患者の専用病棟に入院した同市の男性会社員(25)は、投薬治療により肺炎の症状が順調に回復していた。

 1週間の入院を経て、10日に退院。感染力の強い「N501Y」変異株にかかったとみられるが、他人に感染させる心配はなくなったと主治医に診断され、17日には職場復帰した。

 だが、2キロ減った体重以上に、体力低下の著しさにがくぜんとした。

 退院直後は部屋の掃除や布団の上げ下げなど、ちょっとした家事が重労働に感じた。学生時代は頻繁に引っ越しのアルバイトをこなし、重い物を運ぶのは苦にならなかったのに、12キロ相当のペットボトルの箱を運ぶのにも手を焼いた。通勤で歩いていた1日6000歩が、闘病中はほぼゼロになったのだから無理もなかった。

脈拍の上昇や異常な発汗

 仕事の傍らジムに通い、ジョギングやサイクリングを続けていると、感染前はなかった急激な脈拍の上昇や異常な発汗にびっくりする。「少し動いただけで息が上がる。心肺機能の落ち込みが特に厳しい」

 退院から約1カ月。画像診断で白く写っていた肺の炎症はきれいに消えていたが、「本来の自分の体力にはほど遠く、戻るには時間がかかる」と苦悩する。

 家庭内感染した3人の家族は、入院していた父が5月19日に退院し、3週間ぶりに全員が家にそろった。我慢を強いられた缶ビールを片手に父が「これでみんな復活だな」と笑った。

 家族の濃厚接触者に感染者はいなかったが、男性の職場では2人が陽性と分かり、ホテルで療養した。「接点はなかったはずなのに」と男性は首をかしげる。

周囲を巻き込むしんどさ

 感染判明後、母にかけられた言葉がある。「なりたくてなる人も、うつしたい人もいない」

 母親は高齢者の訪問介護に従事し、男性自身も前職は福祉現場で働いていた。高齢者にとっては、肺炎が命に関わると肌で知っている。昨年の第1波以降、家族全員で対策への意識を高めてきた。

 それでも感染し、男性は自責の念に駆られた。不本意にも当事者となった人たちにとって、母親から受けたような励ましが欠かせないと感じている。

 専門家は「どんな対策でも必ず隙ができる。そこを突いてくるのが変異株の怖さ」と指摘する。男性も「自分はコロナにかからないという気持ちがどこかにあった」と振り返る。

 「感染して経験する現実は、日常的な感染対策の煩わしさとは比較にならない。周囲を巻き込み、治ってからも大変な思いをする」

 ワクチン登場で楽観ムードも漂う社会に、男性の言葉が重く響く。

「自分はコロナにかからないという考えは持たないでほしい」。本調子ではない肺の辺りをさすりながら、取材に答える男性=5月、仙台市内
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