<ヤングケアラー 東北の現場から> (上)予備校生が兄を介助 「家族だから」自覚なく

宙歩さん(左)の食事を介助する啓太さん。「今は大きな負担と感じていない」と気丈に話す

 家族やきょうだいを世話する「ヤングケアラー」と呼ばれる子どもたちがいる。大人が本来担うべき負担は、子どもの人生に大きく影響する。東北の当事者や経験者の声、支援に乗り出した国や自治体の動きから、見過ごされてきた現実と課題を探る。
(報道部・岩田裕貴)

 オムツを替え、トイレでお尻を拭く。一緒に入浴して髪や体を洗う。食事時は隣に座り、おかずとご飯を交互に食べてもらうため、ご飯茶わんにおかずを少しずつ盛り付ける。

 仙台市若林区の予備校生加藤啓太さん(18)は兄の宙歩(ひろむ)さん(20)の世話を両親と分担して続ける。宙歩さんは生まれた直後に発症した病気の影響で重度の知的障害がある。

 小学3、4年の頃に世話を始めた当時は、外出先で宙歩さんの手を引いて歩く程度。高校2年になると、共働きの両親の仕事が忙しくなり、啓太さんの役割がぐんと増した。

 自宅で宙歩さんと二人きりの時には音に注意する。「ガタン」と聞こえたり物音がしなくなったりしたら、転倒していないか様子を見に行く。受験生の身では「やっと勉強に集中できたところなのに」と思うこともある。

 4月になって「ヤングケアラー」という言葉を報道で初めて知った。「うちもそうだよね」と両親と話したが、それ以上の感慨はない。「兄は生まれた時から一緒の家族。『なぜ自分がケアしなきゃいけないのか』と考えたことはない」

 父の清也さん(57)は「仕事が夜まで続いたり、自宅に持ち帰ったりするため頼らざるを得ない。申し訳ない気持ちもある」と啓太さんへの胸の内を語る。

 啓太さんと同じようなヤングケアラーは各地に存在する。子ども自身にその自覚がなく周囲の認知度も低いため、これまで「家族の問題」として見過ごされがちだった。

 厚生労働省と文部科学省は昨年12月~今年1月、全国の中学校・高校とその生徒らを対象に初の実態調査を行った。公立中2年と全日制高2年の計約1万3000人のうち、約8割がヤングケアラーという言葉を「聞いたことがない」と回答した。

 中学校と高校計約1000校に実施した調査では、ヤングケアラーの概念を「知っている」と答えたのは6割程度。生徒への対応に配慮しているのは中学で2割、高校で1割にすぎなかった。

 両省が5月に初めてまとめた支援策では、2022~24年度を集中取組期間とし、啓発イベントの開催などで中高生の認知度を5割に上げる方針を示した。周囲の支えは少しずつ形になりつつある。

 だが、本質の問題は手付かずのままだ。啓太さんは「今は世話を両親と分担しているからいいけれど、将来、兄と二人きりになったらどうすればいいのか」という心配が消えない。

 親亡き後-。老親が障害のある子を世話する「老障介護」、高齢者が老親を世話する「老老介護」にも共通する難題が、若き介護者の背にのしかかる。

[ヤングケアラー]法令上の定義はないが、ケアが必要な家族やきょうだいを世話する主に18歳未満の子どもを指す。障害のある家族に代わり買い物や料理、掃除、洗濯などを担ったり、がんや難病の家族を看病したりする。国が4月に公表した実態調査結果によると「世話している家族がいる」と回答した中学生は5・7%(約17人に1人)、高校生が4・1%(約24人に1人)だった。

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