旧北上川を「北上川」に 石巻市、本流の名称取り戻す

 宮城県石巻市中心部を流れる「旧北上川」について、市は本年度、表記を地域呼称の「北上川」に変えた。住民の愛着があるとされる名前を使う試み。市内では正式な変更を求める声も出ているが、国が管理する1級河川の名称は地元の意向だけでは変えられず、実現へのハードルは高い。
(石巻総局・樋渡慎弥)

 明治から昭和戦前期までになされた治水事業の改修工事の関係で、市内には旧北上川と北上川がある。市が使う地域呼称は地図の通り。登米市津山町柳津付近から石巻湾まで南下する旧北上川を「北上川」、石巻市相野谷付近で北東に流れを変え、追波湾に注ぐ北上川を「新北上川」とした。

 市は4月から転入者に配る「いしのまき案内地図」で、前年までの表記を北上川、新北上川にそれぞれ変更した。

 地域呼称の採用は3月、亀山紘前市長が打ち出した。亀山氏は当時、東日本大震災の復興事業で旧北上川河口の堤防整備が進んだことに触れ「川のイメージが新しくなった。本流としての名称を取り戻したい」と強調した。

 市によると、二つの河川について市議会と市民団体から名称変更を求める要望が以前から寄せられていた。今年2月には市議、県議、市民団体の3者が市として地域呼称を使うよう申し入れた。

 市民団体は旧北上川に関し、住民が幼い頃から北上川と呼び親しんでおり「旧北上川という名称ではなじめない」と理由を挙げる。ある市議は「(中心部を流れる川を)誰も旧北上川と呼んだことはない」と名称変更の必要性を強調する。

石巻市の「いしのまき案内地図」。河川の表記は前年までの「旧北上川」(左)が今年から「北上川」(右)に変わった

 だが要望実現は国の制度上、容易ではない。

 国などによると、1級河川の名称変更は河川法に基づき、国の社会資本整備審議会での議論が必要。流域が登米市や涌谷町にも及ぶため、地域の意向を国に伝える際は県による意見集約と県議会の議決が求められるという。

 市は国への要望や災害時の情報提供といった公的文書では正式名称を使い続けるため、表記を巡ってちぐはぐな対応が続く。

 震災から10年を迎え「市民が復興の先に目を向ける余裕が出てきた」(市関係者)とみる向きもある。市河川港湾課の担当者は「法的制約もあり、市民の声にできることから対応した」と説明。名称変更の手続きについては今のところ静観の構えを見せている。

[メモ]二つの河口と名称がある北上川は国の第1期改修工事(1911~34年)で生まれた。工事では柳津付近で川の流れを二分。相野谷付近までの約12キロの区間を新たに掘削するなどした。地図などに記される正式名称は新河川法施行に伴い1965年に定められた。

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