宮城県のコロナ対応、震災と台風19号の経験生きる 死亡率は際立つ低さ 東北大病院・石井教授インタビュー

 宮城県で新型コロナウイルスへの感染が再拡大している。今春も独自の緊急事態宣言を出し、政府のまん延防止等重点措置が適用されたが、累計感染者数に占める死者の割合(死亡率)は14日時点で0・97%と全国(1・82%)でも際だって低い。県の新型コロナ感染症医療調整本部副本部長で東北大病院総合地域医療教育支援部の石井正教授に背景を聞いた。
(聞き手は報道部・末永智弘)

 ―感染の波が再来した。
 「普通の災害は、ある程度時間がたてば終わりとなるが、コロナは感染災害。波が何度か到来するのが特徴で、また来るかもしれないという懸念を常に持って活動している。いつでも病床を増やせる態勢にある」

 ―3月にも新型コロナ患者が急増した。
 「日に日に病床が逼迫(ひっぱく)し、まずいと思った。とにかくベッドを増やそうと努めた。東北大病院の受け入れ態勢を拡大し、協力病院にも受け入れ枠を増やすよう働き掛けもした」
 「診療の手引きでは『血中の酸素飽和度が93%を切ると入院』としているが、仙台医療圏の病床がぎりぎりの状態になり、91~92%の人にホテル療養をお願いせざるを得ない状況だった」

 ―ホテル療養者への対応で留意した点は。
 「体調悪化に備えて看護師を待機させ、医師も1日1回は往診するルールを決めた。酸素飽和度が90%を切るようなら診察して入院させるなど、しっかりケアした」

 ―宮城県の死亡率の低さを、どう分析するか。
 「危ない状態になりそうな人を把握し、入院調整できたからではないか。ベッドが足りない中で宿泊施設を県が確保してくれた。そこでしっかり注意を向け、症状が悪くなると入院してもらうやり方が機能していると思う」
 「病院間でも悪化した人を転院させたり、医療圏をまたいで受け入れたりと調整した。普段は県庁詰めの医療調整本部員が自ら出向いて診察したこともある」
 「宿泊療養施設には二つのカテゴリーがあって、ほぼ無症状の人は看護師が待機しているところに入ってもらう。ちょっと様子を見た方がいい、という人には検査や薬を手配する態勢を整えた施設に入ってもらう。この手法も有効だった」

 ―本部を県と仙台市で構成している。
 「うまく機能している。県、市双方の保健所から感染者情報が上がり、本部で入院の調整をする。国立大の病院長(冨永悌二東北大病院長)が本部長を務める全国でも珍しい枠組みだが、東北大病院は県内の病院に医師を派遣しており、病院に話が通じやすい」
 「人口が多く、人の流れも集中する仙台の感染を抑止することが重要だった。宮城、仙台の自治体規模だからできた面もある」

 ―東日本大震災の経験は生きたか。
 「県も市も10年前に協力し合って震災に対応したので『あのときと同じようにやりましょう』となった。行政も医療と連携するメリットを肌で知っている」
 「2019年の東日本台風(台風19号)の経験も大きい。当時、被災病院の入院患者を転院させるなどの業務を担った人に本部員をお願いした。医療逼迫時に患者を機械的に割り振っても失敗する。相手の立場を考え、相談しながら入院をマッチングすることが必要。今後も経験を生かす」

 ―新型コロナは「災害」か。
 「普段起きないことが起き、医療の需要とリソース(人的・物的資源)にアンバランスが生じている。災害そのものだ」

 ―東北大病院が県のコロナ対策に協力する理由は。
 「ずっと地域貢献を掲げてやってきた。医師らは若い頃、各地の病院で働き、地域医療の大切さをよく知っている。大学病院と医学部のDNAのようなものだろう」
 「コロナの流行に手をこまねいていると東北大病院も苦しくなる。入院患者の受け入れだけでなく、コロナ以外の病気の治療にも影響が出る。例えば移植医療が滞る。心臓外科、脳外科の手術などもできない。患者さんに申し訳ない」

 ―県と仙台市のワクチン大規模接種にも協力している。
 「33の診療科から毎日十数人の医師を派遣している。看護師の派遣も相当な数だ。接種会場のシステムとレイアウトは東北大が考えた」
 「早くワクチンを広めて宮城のコロナを制圧したい。『患者に手術を待ってもらうのは、もうごめんだ』と考えている医師が多い。東北大病院がワクチン接種に積極的な理由はそこにある」

[いしい・ただし]1989年東北大医学部卒。気仙沼市立病院勤務などを経て2002年石巻赤十字病院第1外科部長。11年2月に宮城県災害医療コーディネーターを委嘱された直後に東日本大震災に遭遇、石巻医療圏の業務調整を担った。12年10月から現職。専門は消化器外科、災害医療。58歳。東京都出身。

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