警察官として、被災地への思い胸に挑んだ 射撃女子エアピストルの佐々木

女子エアピストル予選 被災地への思いを胸に競技に臨んだ佐々木

 被災地への思いを胸に引き金を引いた。25日の東京五輪ライフル射撃女子10メートルエアピストルに、佐々木千鶴(岩手県警)が出場した。東日本大震災後に岩手県内沿岸部で任務に就いた経験があり、復興五輪への思いは強い。「五輪という場で射撃ができたことに対して本当に感謝の気持ちでいっぱい」。震災から10年目で迎えた大舞台。初出場で精いっぱいの射撃を見せた。

 震災時は盛岡市の交番勤務。すぐに釜石市へ応援に向かった。2005年に任官されて最初の配属地だ。「一番楽しい時」(佐々木)を過ごした思い出の地は無残な姿に変わっていた。

 遺体安置所に詰め、遺族への対応に当たった。「もう行きたくない」。父で同じ警察官の正広監督に漏らしたこともある。「釜石署時代にお世話になった人のご遺体もある」。つらい思いをこらえながらの日々が続いた。

 競技を始めたのは震災の年の6月。16年岩手国体に向けた選手育成の選考会に応募した。震災復興の架け橋をテーマにした大会に「優勝することが使命だと思った」からだ。地道な練習が実を結び、エアピストルで全国の頂点に立つ。考えてもいなかった五輪が現実的な目標になった。

 東京大会は新型コロナウイルスに世の中の関心が移り、復興五輪の影が薄れた。正広監督は「1年延期で10年の節目に当たった。震災に人々の目が向いてくれれば」と願う。

 佐々木本人はどう思っているのか。あの時、あの場にいたからこそ、慎重に言葉を選ぶ。

 「被害に直接遭ったわけでもない自分が軽々しいことは言えないが、復興五輪に特別な思いはある」

 決勝には進めなかったものの、堂々と世界に挑む勇姿を被災地に届けた。
(佐藤夏樹)

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