宇宙への夢が詰まったH2ロケットの実物大模型がそびえる角田市台山公園に、地球世界の非戦を希求する「渾(こん)円球上平和の曲」の詩碑が立つ。明治、大正時代に名をはせた角田生まれの詩人吉野臥城(1876~1926年、本名・甫(はじめ))の代表作だ。渾円球とは地球を指す。
世界を何の色にも染めず
正義と自由の圏をゑがきて
愛の泉のつくることなく
平和の光にいろどらしめよ
終連の4行のみを刻む。詩碑にない連では「等しく自由を口に唱へて 麻尼剌(マニラ)に加へしつるぎは何ぞ ひとしく博愛口に唱へて 支那にくはへし砲火は何ぞ」と世界の動乱を憂い、悲憤をうたう。怒りの詩人と評されるゆえんでもある。
多くの市民が憩う台山公園だが、詩碑の存在はあまり知られていない。
「終連の4行が素晴らしい詩だが、全文は長く、内容は至って正論。作品は印象に残りづらい」
吉野を伝える小論をかつて文芸誌に連載した角田市の詩人西田朋さん(77)は、こう分析する。
吉野は10、20代の頃、角田小や仙台の立町小で教員を務める傍ら、歌作や詩作に打ち込んだ。新体詩を追究し、文芸誌に投稿。地方に身を置きながら世に才を示す。1899年に革新短歌結社「新韻会」を仙台で結成。後に歌集「新韻集」を発刊し、県内の文壇をリードした。
西田さんは吉野の詩歌について、角田を流れる阿武隈川の情景をつづった詩「逢隈川辺(おおくまかわべ)」や、生家に近い斗蔵山で詠んだ短歌を挙げ、「故郷愛が表れた優しい作品も多い」と解説する。
吉野は一方で足尾銅山鉱毒事件に関心を深め、被害民の苦境を題材にした詩も発表。正義心と人道主義の信念がうかがえる。
30代で文筆の場を東京に移し、「鉄拳禅」の号で人物評論に乗りだした。政治家や官僚らの姿勢を厳しく観察。「時勢と人物」「党人と官僚」「日本富豪の解剖」などの書籍を著し、鋭い批判精神で名を残した。
文人として多彩な作風を誇るも、東京で病に倒れ、50歳で生涯を終えた。今年は没後95年。「吉野を後世に伝えるために、地元で作品を大切に見直していくべきではないか」と西田さん。武力や厄災、権力の暴走が世界に混迷を広げるとき、詩碑の前で反戦と反骨の志に耳を澄ませたい。
(角田支局・田村賢心)
[メモ]臥城の号は、角田城の別名「臥牛(がぎゅう)城」に由来する。短歌は本名の甫、俳句は牛南などと号を使い分けた。詩集は「小百合集」「野茨集」が知られる。「渾円球上平和の曲」の詩碑は1954年、角田城跡(現在の角田高)のふもとに建立され、後に近くの台山公園に移された。
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