闘将・星野さんも通った「鮨仙一」閉店 夫婦で守ったのれん下ろす

 仙台市青葉区中央3丁目の「鮨(すし)仙一」が31日、閉店した。「仙台一のすし屋に」という店主山田定雄さん(65)の気概が名前に込められた店は、プロ野球東北楽天の故星野仙一元監督にも愛された。「元気な姿を客に覚えておいてもらいたい」。34年間、この道一筋で握り続けた最後のすしを、常連客が笑顔で味わった。

なじみの客が訪れてくれる最後の営業を前に支度をする定雄さん(右)とれい子さん=31日午後5時ごろ、仙台市青葉区

 閉店前最後の2日間、なじみの客十数人が訪れ、煮あわび、ウニ、本マグロなどの自慢のすしに舌鼓を打った。「不器用な人。はやりに流されず、おいしいすしを突き詰めていた」。常連の佐藤和則さん(68)=太白区=が評する。

 大切にしたのは「良い魚を使う」。鮮魚店や仲買人と関係を築き、厳選した魚を仕入れる。素材と向き合い、握り方、煮方、味付けに試行錯誤を重ねた。

 福島県石川町出身。高校卒業後に上京して就職したが「手に職を付けたい」と会社を飛び出し、8年間修業。1987年、30歳で仙台に念願の店を構え、約15年前に仙台朝市に近い現在地に移った。おかみのれい子さん(63)とは結婚39年。接客はあうんの呼吸だ。定雄さんは「おかみがいなければ店をやっていけなかった」と感謝する。

 もう一人、定雄さんがほれ込んだのが星野さんだ。現役時代からのファン。店名もちなんだ。知人を通じた縁から、東北楽天監督就任が決まった2010年秋以降、たびたび星野さんが店を訪れ、親交を深めた。

 14年の監督退任後、贈られた写真パネルの裏には直筆で「寿しの味、人の味 星野仙一」と書いてあった。定雄さんは「一生懸命やれ。頑張れよ。そう書いてくれたと思う」と、闘将の熱い思いに涙した。

 当初は60歳での店じまいを決めていた。「まだ頑張れる」と先延ばしして5年。ついに店を畳む決心をした。長男の恭大(やすひろ)さん(35)は近く市内に新たにすし店を構えるという。

 世は新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言下。「本当は多くのお客さんと陽気に終わりたかった」とこぼす定雄さん。れい子さんがねぎらう。「努力賞をあげたい。親方のすしを多くの人が笑顔で食べてくれた。いろいろな人と出会えた。幸せだった」

 31日、なじみの客から花束が贈られた。「ごひいきしてくださり、ありがとうございました」。夫婦が守り抜いたのれんは、静かに下ろされた。

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る