<モネのいる風景>苦境の林業に新たな光 (中)登米ふれあいの森

森林の魅力とともにロケ地の紹介もする酒井さん=登米ふれあいの森

 NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」に登場する森林の場面の多くは、宮城県登米市登米町の「登米ふれあいの森」で撮影された。

 「雷雨の中、モネと子どもが避難したのはこの堤です」。ふれあいの森のガイドで森林インストラクターの資格を持つ酒井哲雄さん(70)は、樹木の説明にロケ情報も織り交ぜる。

 登米森林公園に隣接する森林散策路「ふれあいの森」にはスギやコブシ、カエデなど多様な樹木が生い茂る。林野庁などが自然環境の癒やし効果を認定する全国64カ所の「森林セラピー基地」のうち、県内で認定されているのはここだけだ。

 女優の清原果耶さんが演じる主人公の永浦百音(ももね)(モネ)が「どうもどうも、こーんにちはー」と突然大声を出して話題となった演出は、地元の高齢者らが実践しているラフターヨガを取り入れた森林セラピーが元になっている。

 酒井さんは「ドラマでは紹介し尽くせない魅力がこの森にはある。すがすがしい空気を吸いに来てほしい」と呼び掛ける。

 「林業が直面する問題が取り上げられたことは大きい」。ふれあいの森を管理する登米町森林組合参事の竹中雅治さん(54)は、ドラマをこう評価する。

 収録に当たり竹中さんは、林業関連の内容を精査・助言する考証役を務めた。俳優のでんでんさんが演じる森林組合の川久保参事が、長年育てた木が買いたたかれて落ち込む場面が印象に残っているという。

 新型コロナウイルス禍などが原因で輸入木材が品薄になり、国産木材の価格が上昇しているとはいえ、50年をかけて育てたスギ材の価格は1本1500円程度。竹中さんは「この価格では林業は成り立たない」と嘆く。

 林業が維持できなければ、森林は荒れ、二酸化炭素(CO2)の吸収や治水に影響を及ぼす。竹中さんは「林業は50年、100年先を考える産業。モネが林業に関心を持つきっかけになってほしい」と期待する。

矢羽木工芸品を作る高橋さん。木目を合わせるなど手作業が続く=登米市津山町の木工センター

 放映以来、品切れが続出しているのが、矢羽木工芸品。同市津山町の津山木工芸品事業協同組合が手掛ける。特に人気なのは弁当箱。モネがお盆で気仙沼に帰省した際、土産として家族に渡した品だ。

 「モネの母役の鈴木京香さん(仙台市出身)がせりふで弁当箱を『めんこいね』と言った直後から、ネットで注文が入り始めた」。道の駅「津山もくもくランド」内にある組合直営クラフトショップの店長阿部幸恵さん(59)は「モネ効果」に驚く。弁当箱は生産が追い付かず、納品まで3カ月待ちだという。

 材料の矢羽材は約40年前、スギの間伐材の利用を目的に職人と東北工大が共同で開発した。スギを集成加工しており、その名の通り矢羽のような木目が美しい。

 矢羽材と木工品は、組合の木工センターで職人が手作りしている。木工職人の高橋勝也さん(75)は「きれいな矢羽模様にするため、木目をそろえている。生活の中で使いやすい木工品を心掛けている」と話す。

 センター職員の小山栄子さん(55)は「モネちゃんのおかげで矢羽木工の魅力を全国に広げてもらった。気持ちを込めた仕事で木のぬくもりをお客さんに届ける」と力を込めた。

木目を生かした模様が魅力の矢羽木工芸品。右は人気の弁当箱=登米市津山町の道の駅「津山もくもくランド」

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