入院患者戻らず経営悪化 国保蔵王病院、前院長が退院求める

 宮城県蔵王町の町国民健康保険蔵王病院の経営が大幅に悪化している。常勤医が前院長だけの1人態勢となった2020年度、「21年度の態勢も決まっておらず、入院患者をゼロにしなければならない」として退院を促すなどしたためだ。収益が落ち込み、今も状況は改善していない。

入院患者が戻らず厳しい経営状況が続く蔵王病院

 町によると、病院は19年度(病床数38床)までは稼働率90%以上とほぼ満床だった。20年度(36床)は患者の受け入れ抑制と退院で稼働率48・4%に落ちた。年1億6000万円台だった入院収益は約9000万円まで減少。前院長が20年度末に退職し医師2人態勢でスタートした21年度、新型コロナウイルスの影響もあって入院患者は戻らず、7月末現在で12人、稼働率28・4%と低迷が続く。

 90代の入院患者の親族は「昨年5月に前院長に『治療の必要がないならば出て行くものだ』と言われた」と話す。自宅では面倒を見られず病院を頼って退院を逃れたが、「おかしいと思った。病院に求められ、出て行った人もいた」と対応をいぶかる。

 前院長の酒井謙次氏(64)によると、19年度末で常勤だった副院長が退職、20年度の常勤医が自身1人になる見通しとなったのを受けて事前に町と協議。「僕が風邪をひいただけで危機的状況。次の医師が来るかどうか分からないのに患者を入院させておくわけにはいかない」と判断したという。20年度は医師の応援をもらうなどして乗り切った。

町長「前院長の考え、町とまるっきり違った」

 村上英人町長は町議会9月会議で「前院長の考えと町の考えがまるっきり違っていた」と釈明した。
 収益の柱だった入院患者の減少は経営を直撃した。19年度末に約1億8000万円あった現預金は20年度末で約9100万円、21年7月末時点で約3800万円。町は資金不足の恐れから21年度に予定していた約1億6700万円の補助金を5000万円増額した。それでも年度末には約700万円しか残らない見通しだ。
 町は現在、療養患者を紹介してもらうよう近隣の病院に働き掛けている。村上町長は「新規患者受け入れに積極的に取り組み、経営改善に努める」と話す。

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