「動くオペ室」、救急との連携35年 広大な会津の救命に貢献

 会津中央病院救命救急センター(会津若松市)のドクターカーと会津地方の3消防本部の救急車が協力して少しでも早く医師の治療が始まるように搬送するドッキング方式が始まって11月で35年になる。近年は、治療の緊急性を早めに判断できるキーワード方式も導入し、ドクターカー出動の要請件数が増加傾向にある。

広大な会津地方の住民の救命救急を支えるドクターカー(右)=会津若松市の会津中央病院救命救急センター

 ドッキング方式は、千葉県にほぼ匹敵する面積5420平方キロメートルの会津17市町村で全国に先駆けて始まった。患者がいる場所と救命救急センターを、救急車とドクターカーがほぼ同時にスタートし、中間地点にある公共機関の駐車場や路上で患者を引き継ぐ。半分の時間で医師の診察と治療を始められる。

 ここ10年の会津若松、喜多方、南会津3地方消防本部のドクターカー要請件数はグラフの通り。

 「ドクターカーはいわば動くオペ室。脳卒中や血圧降下などに対し、いち早い医療措置が可能になる」(南会津地方消防本部)という。4トントラックを改造したドクターカーは医師や看護師が乗り込み、車内で治療や簡単な手術ができる。

 例えば、会津若松市と只見町のそれぞれの中心部の間は車で片道2時間前後、雪の季節は3、4時間近く要することもあるという。重篤な人を助けるため、ドッキング方式の貢献度は高い。片道の半分の時間で搬送から解放された救急隊が、新たな救急要請に対応できるのも利点だ。

 救命救急センター長の小林辰輔医師(50)は「かつては救急救命士ができることが限られていた。命を救うには医者が出迎える方式が現実的だった」とドッキング方式が始まった経緯を説明する。

新たな判断基準導入、見落とし減らす

 より多くの人命を救おうと、消防本部がドクターカー要請の可否を迅速に判断できるよう導入されたのがキーワード方式。2014年12月に運用が始まった。

 「40代以上で突然発症の胸の痛み」「車両同士の交通事故で車体が大きく変形」といった通報者から聞き取った情報が、あらかじめ決めておいた要件に合致すればドクターカーを要請する。ここ10年の実績を見ると、導入後は3消防本部とも要請件数が増加傾向にある。

 小林医師は「アンダートリアージ、すなわち症状の重い人を軽く見積もることをなくすのが大切」と指摘する。逆のオーバートリアージは許容されており、ドクターカー出動後、患者の正確な状態を把握し、消防無線でキャンセルする場合もある。

 キーワード方式は「以前は通信指令室でドクターカーを要請する判断基準が存在せず、導入で初動の遅れが少なくなった」(会津若松地方消防本部)、「緊急度、重症度の高い症例の見落としが減少した」(喜多方地方消防本部)と評価され、効果を発揮している。
(会津若松支局・高橋敦)

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