一極集中にコロナが風穴 充足求めて東北へ軸足

変異する民意 2021衆院選(4)

仙台市の地域おこし協力隊員となった金森さん。今も「自分に合う場所」探しは続く=9月、仙台市太白区秋保町

記憶が後押し

 新型コロナウイルスが、一極集中の磁気も乱す。

 「東京じゃないな」。昨年10月、花堂佳月(はなどうかづき)さん(27)は生まれ育った街を見切り、釜石市に移住した。

 世田谷区出身で、皇居近くの高級旅館に勤務。コロナの感染拡大で3月、東京五輪・パラリンピックの延期が決まり、5月に旅館が休業した。

 空白となった時間が生活を見詰め直させた。「給料は高い生活費に消え、食事は外食や出来合い中心。望んだ生活とは違う」。埋め合わせるかのように「豊かな食と自然」を基準に移住先を探し、釜石に決めた。

 「中学の修学旅行で訪れたことがあったし、ラグビー好きの母親からも(日本選手権を7連覇した)新日鉄釜石の話をよく聞かされた」。引き寄せたのは偶然の記憶だ。

 釜石では市の観光まちづくり会社「かまいしDMC」に入社。前職の経験が会社のニーズと合った。釜石湾で採れた海の幸や近所の畑を借りて育てた野菜などが並ぶ食卓は、ぜいたくなほど豊かだ。

 思い描いた生活はかなった。「ずっとここに居たいけれど、本当に受け入れてもらうのはこれから」。新参者からの脱皮を目指す。

思考が「停止」

 仙台市太白区の金森輝(かなもりひかる)さん(27)は昨年5月、3年過ごした六本木ヒルズ(東京都港区)を去った。

 実家は山形市の老舗酒店だ。会社と家族を背負って働く父の姿を見て、高校時代に起業を志した。大学進学で上京後、書店で目にした起業家の自伝に引かれ、著者が経営するITベンチャーに2017年に入社。入居先が「ヒルズ」だった。

 仕事は、注文と会計を一括管理する販売時点情報管理(POS)機能を持つタブレット端末の営業。好調だった販売は19年10月の消費税増税で暗転。コロナ禍が追い打ちを掛け、仕事が激減した。

 満員電車に揺られて馬車馬のように働き、休日は昼まで寝て終わる。「起業したくて上京したのに、思考停止の状態。なりたくない大人になっている」自分に気付いた。

 今年8月、仙台市で初の地域おこし協力隊員となり、太白区の秋保総合支所に赴任。週4日、空き家の利活用事業に取り組む。休日は友人とキャンプし、自然の中で穏やかな時間を過ごす。

 心に余裕は戻ったが、地域貢献だけを期待されることに正直、戸惑いもある。

 「こっちで起業して、あっちでまた挑戦するのも悪くない」。憧れをリセットし、ようやく東京を客観視できる気がしている。

東京で生活が上向く希望持てず

 政府の旗振りでは進まなかった東京一極集中の是正が、新型コロナの感染拡大後は変化の兆しを見せている。コロナ禍を機に生活様式を見直し、東京を離れた人が増えたとみられる。

 総務省統計によると、東京都は20年5月に転出が転入を1069人上回り、比較可能な13年7月以降で初の転出超過を記録。翌6月は転入超過に戻ったが、7月から21年2月まで連続して転出超過だった。3、4月は入学・入社などで一時的に転入が増え、5月以降は再び転出超過が続く。

 20年の東京都から東北への転入を19年と比べると、青森県の2518人(11人減)を除けば、岩手県2205人(80人増)宮城県6275人(31人増)秋田県1817人(96人増)山形県1856人(89人増)福島県4074人(215人増)と増加傾向にある。

 自治体と連携して移住を支援するNPO法人ふるさと回帰支援センター(東京)への相談も、コロナ発生後は増えている。高橋公理事長は「東京にいても、生活が上向くという希望が持ちづらくなっているのではないか」と分析する。

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