「割引待ち」の旅行憂慮 細く長い支援策に期待

衆院選 暮らしの現場から(3)観光復活

フロントで宿泊客を待つ由香里さん。客足の戻りは鈍い=仙台市青葉区作並

 新型コロナウイルス禍による旅行需要の低迷が温泉地に暗い影を落とす。

 「コロナ前の水準に戻る日はいつになるのか」。仙台市青葉区の作並温泉でホテル「湯の原ホテル」を経営する菅原敬史さん(45)は、売り上げを記した帳簿を手に表情を曇らせる。

 3年前に父親から引き継いだ。館内を改装して貸し切りの露天風呂を新設。これからだという時にコロナ禍の逆風に見舞われた。

 2020年4月、緊急事態宣言の発令で客足が遠のいた。書き入れ時のゴールデンウイークは休業を迫られ、20年の売り上げは前年の6割ほどに落ち込んだ。21年も宣言のたびに休業を繰り返す苦境が続く。

 休業協力金や雇用調整助成金、金融機関の特別融資枠といった支援策をフル活用して従業員の給料は確保している。それでも「経営は赤字続き。資金繰りも限界に来ている」と唇をかむ。

漂う疲弊感

 観光振興策の目玉として20年7月に始まった「Go To トラベル」にも振り回された。一時的に売り上げが回復したものの、感染拡大で12月には事業が中止に。客足はぱたりと途絶えた。

 菅原さんは新たな観光振興策に期待を寄せつつも、複雑な思いを抱える。「割引がなければ旅行しない『割引待ち』の状態になっている。割引終了後にかつての客足が戻るかどうか」と反動を懸念する。

 先行きが見えず、従業員にも疲弊感が漂う。おかみとして共にホテルを切り盛りする妻の由香里さん(38)は「長期休業か繁忙期かの極端な状態。人繰りや従業員のモチベーションの管理も難しい」と語る。

 割引手続きの煩雑さなどトラベル事業の課題も痛感した。「説明は宿泊業者任せ。予約が殺到する中で割引を巡るお客さまとのトラブルも増えた」と打ち明ける。

実証実験も

 緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が9月末で全面解除され、政府は再び人流の抑制からかじを切った。トラベル事業再開に向け、宿泊時にワクチンの接種済証や検査の陰性証明を使う実証実験も始めている。

 宮城県や仙台市の宿泊割引キャンペーン再開もあり徐々に明るい兆しが見えつつあるが、コロナ前の水準には程遠い。全国から人が集まるトラベル事業への期待が高まる一方で、「第6波」の引き金となる不安もくすぶる。

 コロナ対策と観光振興の両立をどのように図り、観光復活に向けた長期的な展望をどう描くか。菅原さんは与野党の訴えを注視する。「求めるのは一時的な観光客の増加ではなく、細くても長い観光業の底上げだ。誰もが安心して旅行に行けるような環境を実現してほしい」
(報道部・佐藤駿伍)

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る