「やさしい日本語」知ってますか 「話す」「書く」言い換えのこつ、研修で学ぶ

やさしい日本語で、図書館カードの作り方を伝える方法を考える参加者
言葉の言い換えの練習問題

 外国人住民とのコミュニケーションの手段として「やさしい日本語」が注目される中、宮城県国際化協会(MIA)は15日、仙台市の県自治会館で自治体職員向けの研修会を開いた。県内の市町村や県職員らと一緒に記者も研修に参加し、やさしい日本語を使って「話す」「書く」ためのこつを学んだ。(編集局コンテンツセンター・上田敬)

宮城県内の在留外国人数はコロナ禍の影響があるものの、基本的には増加傾向にある(資料提供・県国際化協会)
河北新報の「やさしい日本語」ニュース

二つの意味

 やさしい日本語には、「易しい」「優しい」という、二つの意味が込められている。言葉を言い換えたり一つの文を短くしたりして、伝わりやすくする「易しさ」と、外国人にも分かりやすいよう配慮する「優しさ」だ。

 1995年の阪神淡路大震災をきっかけに、外国人住民にも情報を確実に伝える必要性が広く認識された。その後、災害に限らず平時でも、行政機関での外国人対応、技能実習生やアルバイトの留学生らとの職場でのコミュニケーション、さらに地域で暮らす外国人と話をする手段として、普及と活用に向けた取り組みが進んでいる。

「絶対の正解」はなし

 この日の研修では県国際化協会の大泉貴広さんが講師になり、話し言葉と書き言葉に分けてこつを伝えた。

 話し言葉の第1のポイントは「ゆっくり、はっきり」。普段よりもスピードを遅くして、一つ一つの単語を明瞭に発音する。あまり細切れにするとかえって分かりにくくなるので、不自然にならない程度にとどめる。

 言葉の選び方も重要で「簡単な単語を使う、言い換えする」。具体的には、なるべく意識して和語を使う。「両親」と言うよりも、「お父さん、お母さん」の方が伝わりやすい。「介護保険制度」のような言葉は一つの単語での言い換えは難しいが、「お年寄りを助ける制度です。みんなでお金を払います。お年寄りはサービスを受けることができます」のように文にすると分かりやすくなる。

 「絶対の正解というものはありません」という大泉さんの助言を受けて、参加者は言葉の言い換えに挑戦した。

やさしい日本語の言い換え例
(1) 休日→    休みの日
(2) 危険→    危ないです
(3) 大金→    たくさんのお金
(4) 終了する→  終わります
(5) 納付する→  お金を支払う
(6) 記入する→  書きます/書いてください
(7) 訂正する→  直します
(8) 公共交通機関→バスや電車(地下鉄)
(9) 税金→    国や県、自分の住んでいるまちに払うお金
(10)予防接種→  病気にならないための注射

 少し考えてみると、別の言い方ができることに気付く。

意味の伝達重視で

 曖昧な表現を使わないこともポイント。「たばこはご遠慮ください」は、単純に「たばこを吸わないでください」と言えば伝わる。「来てくれなくてもいいです」という表現は、「来なくていいです(来ないでください)」と言い換えられる。

 尊敬語や謙譲語を使わないことも重要だ。元の単語と形が変わってしまうため、聞いて理解するのが難しくなるためだ。「どなたですか」は「誰ですか」、「佐藤と申します」は「佐藤です」とする。「です、ます」を使って丁寧に言えば、相手への敬意を示すことは可能だという。

 ややぶっきらぼうな印象もあるが、「意味を伝えることを重視する場合には、はっきり言った方がいいでしょう」と大泉さん。

「なげでおいでけろ」

 カタカナ語(外来語)も難しい場合があるという。「テレビ」「ラジオ」のように社会に定着した言葉は問題ないが、「キャンセルします」は分かりにくい。「やめます」と言えば簡単だ。

 残念ながら方言も理解が難しい。宮城の言葉で例に出されたのは「こいづ、なげでおいでけろ」。「これを捨ててください」と言えば問題なく伝わる。

 「ザーザー」や「ぐちゃぐちゃ」のような擬音語や擬態語も避ける。動詞を名詞化した「泳ぎが得意です」という表現は「上手に泳ぎます」と言えばいい。

 言い換えだけでなく、「必要な情報に絞って伝える」「実物や写真などを示しながら会話する」といった工夫も効果的だ。相手が次の言葉を考えるのに時間がかかることがあるので、たたみかけるように話さず、待つことの大切さも指摘された。

日常会話の言い換えの練習問題

言葉選び以外にも一工夫

 書き言葉は、話し言葉のポイント以外にも注意すべき点がある。

書き言葉のポイント
(1)使う漢字や漢字の量に注意し、振り仮名を付ける
(2)場合により、分かち書き(文節の切れ目ごとに余白を設けること)をする
(3)イラストや写真、箇条書きを活用して、視覚的に分かりやすくする
(4)時間や年月日の表記をわかりやすくする

 これらの工夫をすると、伝わり方は格段に向上する。パソコンの場合、多くの人が読みやすいよう工夫された書体「ユニバーサルデザイン(UD)フォント」を選ぶだけでも印象は変わる。

多様化する外国人住民

 外国人対応というと、各国語ごとにきめ細かく翻訳や通訳サービスを提供すべきだとの考え方もある。しかし、宮城県内で暮らす外国人の出身国は多様化しており、英語や中国語を話す人ばかりではない。 
 仙台市職員の中川敬裕さん(30)は区役所勤務の経験から、窓口で外国人に応対する場面は確実に増えたと感じるという。「行政サービスの提供には意思疎通が欠かせないが、全ての言語に対応するのは難しい。やさしい日本語の必要性や、使い方のノウハウが学べて良かった」と話した。

宮城県内の国籍・地域別の在留外国人数(資料提供・県国際化協会)

「役所の手続き」に困る

 県内在住の外国人を対象に県の委託で県国際化協会が20年に実施したアンケートでは、日本語が不自由なために困ったことがあるかを聞いたところ、「役所の手続きで」が最も多い48%、「郵便局・銀行の手続きで」「仕事で」が続いた。

 県国際化協会の大泉さんは「少しでも外国人に分かりやすい方法でコミュニケーションを取ろうというのが『やさしい日本語』の考え方。行政職員は意識的に使ってほしい」と述べた。

 また、誰のためのやさしい日本語か、という点では、行政や医療サービスを適切に利用してもらえる、仕事が円滑に進む、お互いが理解し合える、防災減災につながる、インバウンド(訪日外国人旅行者)誘致に活用できるといった利点を挙げて、「外国人だけでなく、日本人のため、社会全体のためでもある」と、やさしく訴えかけた。

在留外国人数の推移。ベトナムの人が急増しているのが分かる(資料提供・県国際化協会)
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