ワクチン接種後の体調不良 国への救済申請、宮城は30件超す

 新型コロナウイルスワクチン接種後に生じる体調不良に関し、宮城県内では国の予防接種健康被害救済制度に基づく死亡一時金、医療費などの申請が30件を超えたことが河北新報社の取材で分かった。窓口となる市町村には合計で110件以上の問い合わせがあり、申請はさらに増えそうだ。

 35市町村に11月17~30日、直近の状況を問い合わせた結果、申請を受け付けたのは仙台、石巻、名取、角田、多賀城、栗原、大崎市と亘理、大和町、大衡村の計10市町村。最多の仙台市は10件を超え、名取市が5件、角田市4件などと市部での申請が目立つ。大崎市には4件の申請があり、1件は国の救済が認められたという。

 申請を受け付けた中には「高齢者が2回目の接種を受けた翌日に心筋梗塞で死亡」「緊急入院した」といった例が含まれる一方、長期にわたり不調が続く状態が含まれているかは不明。問い合わせは、集計しない自治体を除いても合わせて110を超えた。「過呼吸で1日入院したが、救済制度の対象になるか」(女川町)、「持病が悪化し通院した。体が痛い」(大和町)、「申請が可能な親族の範囲は」(名取市)などの質問があった。

 亘理町では「接種から数時間後に心不全を発症し、救急搬送された」「接種の経過観察中、目まいやせきが出て医療機関に運ばれた」という訴えもあった。

 各自治体は救済制度の周知に知恵を絞る。接種券と一緒に手続きを説明する文書を同封したり、接種会場やホームページで仕組みを知らせたりしている。

 申請には、体調不良で受診した際のカルテや受診証明書などが必要となる。ある町の担当者は「ワクチンとの因果関係が明確ではないとしてカルテを出したがらない医師もいる。申請しても国の判断が示されるまで時間がかかり、どこまで救済されるかも説明しづらい」と課題を指摘する。

医療問題に詳しい坂野智憲弁護士に聞く

 新型コロナウイルスワクチンの接種後、重い体調不良に陥った人たちに対する健康被害救済制度の在り方が注目されている。制度自体は40年以上の歴史を持つが、因果関係の認定が厳しく門戸はかなり狭いとされる。医療問題に詳しい坂野智憲弁護士(61)=仙台弁護士会=に救済制度の在り方を尋ねた。
(聞き手は大崎総局・喜田浩一)

「被害救済制度の見直し必要」

 -宮城県内でもワクチン接種後に心臓や脳の病気などで死亡・入院した事例がある。救済の見込みは。

 「救済制度ができた1977年から、2019年まで、さまざまなワクチン問題で死亡一時金が支払われたのはわずか148人にすぎない。医療費や障害年金を支給したのは3419件。今回のコロナワクチンでも見通しは厳しい」

 「(アレルギー反応の)アナフィラキシーのように接種直後の典型的な症状は認めるが、基礎疾患を持つ中高年者が死亡した例などは因果関係を認める可能性が低いだろう」

 -門戸が狭くなる原因は何か。

 「厚生労働省が設置する審査会のメンバーが医療関係者に限定されているのが一因だ。科学的に厳格な証明がなければ因果関係が不明と判断されてしまう」

 「救済されないという決定に不服がある時は、都道府県知事に対して行政不服審査法に基づく審査請求をすることはできる。委嘱された専門家が判断するが、こちらも厳しいかもしれない」

 -制度を改善するとしたらポイントは。

 「審査会に法律や一般人の代表を入れ、メンバーを大幅に増やして多様な意見を反映させるべきだ」

 「現行では死亡一時金として4420万円を給付するなど完全な補償を目指す制度になっている。障害年金などの年額も高額に設定され、多数の人に適用すれば国家財政に多大な影響を与えることも危惧される」

 -救済の門戸を広げる方法はないのだろうか。

 「別の制度を作る手がある。東日本大震災などによって死亡した人の遺族には、市町村が最大500万円の災害弔慰金を支給する。類似した制度を作ることは考えていいのではないか」

 「災害弔慰金のような制度を作って個々の自治体がより簡易、迅速な認定をする方がスピーディーな救済につながる」

[坂野智憲(さかの・とものり)氏]1960年仙台市生まれ。中央大卒。92年仙台弁護士会登録、93年坂野法律事務所開設。仙台市民オンブズマン代表、仙台弁護士会副会長などを経て仙台医療問題研究会代表。

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