特定難しい感染経路、関係者に動揺広がる 宮城の養豚場で豚熱

作業に当たる関係者と、殺処分した豚を入れる大型の袋(中央)=13日午前0時ごろ、大河原町(宮城県提供)

 豚熱(CSF)が宮城県の養豚場で初めて確認された現実は、見えないウイルスを相手に感染を防ぐ困難さを浮き彫りにした。患畜が出た養豚業者は県内大手で、対策には細心の注意を払っていたとされる。感染防止の高い壁に、関係者の動揺が広がっている。

 県によると、感染が判明したのは、大河原町の養豚場で飼育していた生後約80日の子豚で、皮膚が変色するチアノーゼの症状が出たり、死んだりした。いずれも11月上旬、豚熱ワクチンを接種済みだった。

 子豚は母豚の乳やワクチンを通じて抗体や免疫を獲得し、ウイルスから身を守る。ただ、免疫の程度は個体によって異なり、感染した子豚は十分な免疫を得られていなかったとみられる。

 同町の養豚場は防護柵の設置など「ハード面の対応が十分になされていた」(県家畜防疫対策室)。豚熱ウイルスは野生イノシシや小動物を介して養豚場の豚に伝染した疑いなどが想定されるが、感染経路の特定は難しいという。

 2018年以降、国内の養豚場での感染は今回が75例目。1カ所当たりの殺処分頭数は数百から2万超まで幅があり、県は殺処分の対象となった約1万1900頭を大規模な事例と捉える。

 県内では約140カ所の養豚場の大半が防護柵の設置を完了。県は11月下旬、野生イノシシに対する経口ワクチンの埋設に乗り出し、県南を中心とした8市町の計80地点に1600個を仕掛ける予定だ。

 県の宮川耕一農政部長は「県内の養豚場は衛生管理基準をしっかりと順守している。全国的に見ても、厳格な衛生管理をしている農場ですら豚熱に感染している」と指摘。「豚熱は野生イノシシが拡大傾向にあるため歯止めがかからない。引き続き最高度の警戒態勢を維持する」と話す。

殺処分した豚を入れる大型の袋=13日午前0時ごろ、宮城県大河原町(県提供)

養豚業界、水際対策を徹底

 宮城県大河原町の養豚場で豚熱(CSF)の感染が12日に確認され、県内の養豚業界は警戒を一層強めた。県内では6月から野生イノシシへの感染が広がり、各業者はワクチン接種や消毒、防護柵の設置といった水際対策を徹底。「現場では限界がある」などと、国や県に抜本策を求める声が相次いだ。

 「不運としか言いようがない」。白石市の養豚場から年間6000頭を出荷するしまざき牧場(神奈川県)の嶋崎裕吉社長(47)は、隣接する大河原町での発生を残念がる。

 嶋崎社長によると、年明けから家畜保健所に加え、農場の管理獣医師も柔軟な日程でワクチンを打てるようになる矢先だった。「(大河原は)扱う数の多い養豚場。食肉の国内相場に与える影響も大きいだろう」と予測した。

 加美町の養豚業者は「衛生管理がしっかりした養豚場だったのでびっくりした」と率直に語る。自社でも敷地に出入りするトラックや豚舎での作業員の消毒を励行するが、「今後はさらに消毒の数を増やしていくつもりだ」と気を引き締めた。

 「県内いつどこで豚熱が発生してもおかしくない。これ以上の対策を取れないというのが現場の本音だ」と危機感をあらわにするのは県北の養豚生産者(54)。豚の放牧を手掛ける大崎市の田尻農産加工販売の高橋精一社長(72)も「急増する野生イノシシを駆除して数を抑え込まないと、被害は広がってしまう」と根本的な対策を訴えた。

 県南の生産者は、2018年9月に国内の養豚場で26年ぶりに豚熱が確認されてから、国の対策が不十分だったと指摘。「国は小手先の対応ばかりではなく、もっと予算をかけて防疫の研究を計画的に実施してほしい」と注文した。

 食べたとしても健康への影響はないが、「2件、3件と続けば消費に影響が出るかもしれない」(県北の養豚生産者)と風評被害への懸念も出た。県南の生産者は「肉は安全に食べられること、生産者は対策に気を使っていることを消費者には理解してほしい」と力を込めた。

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る