新型コロナウイルスのオミクロン株の流行が続く欧州。オーストリアの病院でコロナ患者の治療にも携わった医師のマルチン・ピエトラシケビッチさん(仙台市在住)に、インフラ維持のために現地で広がる取り組みを報告してもらいました。河北新報オンラインニュースのオリジナル記事です。
オーストリアでは2021年12月12日、4回目の国全体のロックダウン(都市封鎖)が終わりました。しかし、予防接種の未接種者と、新型コロナウイルスの検査を受けない人々に対しては、その後も日常生活が制限されています。ロックダウン後、感染者数は大幅に減り、クリスマスの買い物やお祝いをすることができました。しかし、その後オミクロン株による感染が急速に拡大しています。
12月19日、19人からなるドイツ政府のCOVID―19に対する専門家評議会は、オミクロン株が「パンデミック(世界的大流行)に新しい次元」をもたらし、爆発的な広がりは国の重要なインフラストラクチャー全体を強く逼迫(ひっぱく)させるだろうと発表しました。ラウターバッハ厚生相、ショルツ首相、そして有名なウイルス学者ドロステン・クリスチャンら政治家や専門家が署名した書面では「オミクロン株の感染者数はたった2、3日で倍々になっていくという、いまだかつてない速さで拡大しており、すでにコロナに罹患(りかん)した人や予防接種を接種した人にも強い影響を及ぼす」との可能性が指摘されていました。
人口のある程度の割合が同時期に罹患もしくは接触者として隔離される可能性があるという悲観的な予測もありました。医療機関だけでなく、警察、消防、救急、電気通信、電気や水道、そして物流業界も危機にさらされており、さらに子供や介助を必要とする人々の世話もあって働ける人口がさらに減ってしまう、という予測が立てられました。
ドイツの隣国であるオーストリアでもオミクロン株による感染の波への対策が始まっています。オーストリア危機管理センター長(内閣とは関係ありません)のサウルグ・ヘルベルト氏はスタンダード紙(本社ウィーン)のインタビューで次のように述べています。
「私たちは供給危機の可能性に直面しています。けれども、人々は数日間分だけの備えしかしていないと思います。(中略)エネルギー供給業者または小売店の従業員が一気に病欠または隔離になってしまった場合、市民生活への脅威となるでしょう」
サウルグ氏は、パニックに陥って買い占めなどは行わないよう強調しつつ、人々に食料などの備えをしておくことを訴えました。
実際、20年3月の最初のロックダウン中、多くの従業員がコロナ感染症にかかったり、または濃厚接触者として自宅隔離となったりしたため、オーストリアの兵士は物流センターや老人保健施設の仕事を手伝わなければなりませんでした。
当時、いわゆる重要インフラの従事者は、自宅勤務になるか、社内の小さなチームに分けられチーム以外の人とは会わない様にして、周囲から隔離されました。
例えば、オーストリア放送協会(ORF)はそれぞれ2週間、ラジオとテレビで外界から隔離したチームを結成し、人々に継続的に情報を提供できるようにしました。
現地報道によると、今回ウィーンでは、重要インフラで働く従業員の隔離を再開しました。オミクロン株の波の間に、200万都市であるウィーンの電気、ガス、暖房の供給を確保するため(ウィーンではごみ焼却の熱で市の中心部の住宅の暖房をまかなっている)、50人のボランティアの男性職員が選ばれました。
彼らはまず、勤務の1週間前から他の人と接触せず、毎日PCR検査を受けます。そして、1週間たった1月7日の金曜日に、ウィーン市全体に電力を供給する発電所、もしくは、三つあるごみ焼却場にそれぞれ移動し、そこで4週間働きます。
その間、食事は提供されますが、外に出ることは許されません。余暇には新聞、本、ゲーム、パズル、家庭用テレビゲーム機、フィットネスセンターなどを自由に利用できるようになっています。
オミクロン株の急速な広がりを考慮して、一部の専門家は「コントロールされた集団感染」を支持しています。ウィーン医科大の数理モデル専門家であるクリメック・ペーター氏とトゥルンヘル・シュテファン氏は、ロックダウン以外の対策が必要になると考えています。
オーストリアでは人口の73%が2度のワクチン接種を受けています。彼らは、今後さらに接種率が上がることは期待できず、オミクロン株による波をこれ以上防ぐことも、遅らせることもできないだろうと考えています。
従って、10~20%の人々がオミクロン株に感染するだろうと予想します。これは、例えば病院では最大2割のスタッフが欠ける可能性があることを意味します。その対策として、重要インフラの担当者の隔離期間を短縮するべきであると言っています。国民への段階的な感染を許すことによって、逆に感染の波がより早期に終焉(しゅうえん)に向かうことになるのではないかと予測します。
一方、一般住民への追加のワクチン接種は、逆に感染の波を長く引きずってしまう恐れがあるのではないかと指摘します。しかし同時に、この方法で感染症の波を乗り越えることは非常に危険でもあり、特にワクチン未接種の人にとっては、重症に陥ることが予想されることを認めています。
どの措置を講じるべきかについての最終決定は、専門家ではなく、政治家によって行われます。国民の日常生活を守るため、オミクロン株流行の波の中でもエッセンシャルワーカーは何としても守られなければなりません。ヨーロッパの国々はパンデミックから多くを学んできました。日本にも似たような対策はあると思いますが、それがうまく実行されるかどうかは、オミクロン株の急速な流行で真価が問われることでしょう。
マルチン・ピエトラシケビッチ(Marcin・Pietraszkiewicz) 1970年、ポーランド生まれ。1999年、ウィーン大学医学部卒業。救急医。熱帯医学も修めた。2021年夏までオーストリアの首都ウィーンの公立病院で働き、コロナ患者の治療に携わった。現在は仙台市在住。
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