同性カップルの住宅ローンに壁 利用条件に自治体のパートナー制度
同性のパートナーと一緒に住んでいる自宅を改築する予定です。パートナーと一緒にローンを組むため、性的少数者(LGBT)向けの住宅ローンがある地元の金融機関に相談しようとしました。ところが、自治体による「パートナーシップ制度」で公認されたカップルしか利用できないと言われてしまいました。(愛知県刈谷市、40代、自営業男性)
同性カップルを公的に認めるパートナーシップ制度が全国で広がっています。とはいえ、導入した自治体はまだ限定的。投稿者が住む愛知県刈谷市にも同制度はなく、利用が条件になっているLGBT向け住宅ローンは組めません。同性カップルが暮らしの中で直面する壁について取材しました。
制度の有無で分断
「せっかくマイノリティーのカップルが住宅ローンを使えるようになったのに…。パートナーシップ制度がある自治体かどうかが、新たな分断を生んでいる」
今回、中日新聞(名古屋市)のユースク取材班に投稿をした刈谷市の拓さん(仮名)が肩を落とした。拓さんは当初、5年前から同居している会社員の同性パートナーと一緒に住宅ローンを組もうとした。2人でローンを組めば希望の額を借りやすいと考えたからだ。
結婚した夫婦であれば、同じ物件で夫婦それぞれがローンを組む「ペアローン」を利用したり、収入を合算して借り入れをしたりすることができる。この仕組みを同性カップルにも拡大する動きが近年、金融機関で広がっている。
2017年、みずほ銀行が邦銀で初めて同性カップル向け住宅ローンを発表。各銀行にも「LGBT向けローン」が広まった。みずほ銀行は当初、全国で初めて東京都渋谷区が発行を始めたパートナーシップ証明書の写しの提出を求めていた。だが、区外の人にも対応するため、条件を緩和。本人の判断能力が低下した場合に備える任意後見契約を結んでいるなどすれば、ローン利用が可能になった。
長野銀行(長野県松本市)や八十二銀行(長野市)も、制度のない自治体に住む同性カップルがローンを利用できるようにした。
一方、拓さんは昨年7月、LGBT向けローンのある大垣共立銀行(OKB、岐阜県大垣市)と西尾信用金庫(愛知県西尾市)に相談をしたが、いずれも「パートナーシップ制度がない自治体の人は利用できない」と断られてしまった。
取材に対しOKBは「条件の緩和は今後の検討課題としたい」、西尾信金は「すぐに条件を変えるとは言えないが、検討の余地はある」とコメント。拓さんは「自分たちは無理でも、他の人たちがローンを利用しやすいようになってほしい」と柔軟な対応を求める。
賃貸、医療でも不利益
中部地方では、県のパートナーシップ宣誓制度で県全域をカバーする三重県があるものの、愛知県で制度があるのは西尾、豊明、豊橋、豊田の各市に加え、1月4日に開始したばかりの蒲郡市の計5市だけ。岐阜県内は、県によるとゼロだ。
自治体に制度がないことで同性カップルが不利益を被るのは、住宅ローンの問題だけではない。
愛知、岐阜両県のLGBT当事者らでつくる「愛知・岐阜にパートナーシップ制度を求める会」は昨年春、会員制交流サイト(SNS)を通じて当事者にアンケートを実施。「住居の賃貸契約で断られやすい」「医療機関で家族として認められないことがある」といった声が上がったという。
会を発足させた名古屋市の男性(52)は「同性カップルも異性カップル同様に法的に認められ、幸せを求める権利がある」と話し、パートナーシップ制度への理解を求めている。
(中日新聞社提供)
東北、七十七銀が取り扱い
東北では七十七銀行が6県の地方銀行に先駆け、同性カップルでも夫婦と同じように返済できる住宅ローンの取り扱いを昨年12月10日に始めた。
2人の収入を合算し、連帯債務者となって契約することができる。相続時のトラブル回避のため、一方が亡くなった場合にローン残高がなくなる連生団体信用生命保険などへの加入が条件となる。
パートナーシップ制度は東北では2020年、弘前市が初めて設けた。秋田市も昨年12月、22年度中に導入する方針を明らかにした。秋田県も導入に向けて検討を進める意向を示している。
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