風評払拭、進まぬ理解 処理水海洋放出方針決定から1年

県民会議で政府と東電に疑問や要望をぶつける住民ら=3月24日、福島市

 東京電力福島第1原発にたまり続ける放射性物質トリチウムを含む処理水の処分に関し、政府が2023年春ごろに海洋放出する方針を決定してから13日で1年がたつ。海洋放出まで残り1年。政府は昨年12月末に中長期の行動計画を策定し、予想される風評被害の払拭に向けた理解醸成の施策を随時進めるが、手応えはいまひとつだ。福島県内の関係者には焦りの色がにじむ。(福島総局・横山勲)

 「処理水放出について地元の思いは人それぞれ。もっと本音を伝えていくべきだ」。3月24日に福島市であった県廃炉安全確保県民会議。浪江町行政区長会議会長を務める佐藤秀三委員(77)は席上で率直な思いを吐露した。

 処理水には除去が難しい放射性物質トリチウムが大量に含まれる。通常の原子力施設でも海や大気に放出して処分している。政府と東電は安全性を繰り返し強調する。

 佐藤さん自身は放出自体はやむを得ない、という立場だ。「地元の大多数は安全性を理解した上で、できるなら放出をやめてほしいと思っている」。佐藤さんはそう推測している。地元の人が処理水をどう捉えているかを正確に発信しなければ「かえって風評を招く」と危惧する。

 福島県漁連の野崎哲会長は4月5日、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長と共に都内で萩生田光一経済産業相と面会。終了後の取材に「(処分問題への)『理解』と『了解』は違う」と強調し、改めて反対姿勢を鮮明にした。

 15年に事故炉周辺でくみ上げた地下水の海洋放出を県漁連が「了解」した際、一部反対派の批判の矛先が漁業関係者に向いた経緯もある。県漁連は「処理水」の放出については当時から一貫して反対しており、溝は埋まりそうにない。

 東電は本年度から第1原発構内に福島県内の住民を招く視察会の実施回数を拡充するなど、理解促進の取り組みを大幅に強化する。東電福島復興本社の高原一嘉代表は「信頼を失っている自覚はある。まずは処理水の安全性を理解をしてもらうことを最優先に説明を尽くしたい」と話す。

[処理水] 第1原発の原子炉建屋に流れ込んだ雨水や地下水が、溶け落ちた核燃料(デブリ)に触れて発生する汚染水を、多核種除去設備(ALPS)で浄化し放射性物質をこし取った水。除去が難しい放射性物質トリチウムが含まれる。放出時は処理水と海水を混ぜ、世界保健機関(WHO)の飲料水基準の7分の1(1リットル当たり1500ベクレル)未満に薄める。2021年中の汚染水の1日平均発生量は150トン。処理水の保管量は3月末時点で約129万トンで、上限量(約137万トン)の約95%に達した。タンクは23年春ごろに満杯になるとされる。

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