「廃虚の聖地」化女沼レジャーランドへ… ツアーで行ったらエモかった! 3億円でまるっと購入もOK

背の高い雑草に覆われた遊園地=2022年4月16日、大崎市古川の化女沼レジャーランド

 「廃虚の聖地」とも呼ばれる宮城県大崎市古川の「化女沼(けじょぬま)レジャーランド」。2001年10月に遊園地が閉園してから20年以上たつが、朽ち果てた観覧車などの遊具が荒れ地に手つかずで取り残されている。時の流れや栄枯盛衰を感じ取り、ノスタルジーに浸る。そんな楽しみを提案する観光ツアーがひそかな人気を集めている。(編集局コンテンツセンター・佐藤理史)

夢を描いて

 仙台から北へ約50キロ。約1時間、バスに揺られる。東北道の長者原スマートインターチェンジを出て程なくすると、さびの目立つ入場ゲートが見える。「化女沼レジャーランド」の丸文字が虹の絵の上に描かれている。かつて楽しい雰囲気を醸し出すのに一役買っていたのだろう。

さびついた入場門

 元レジャーランド社長の後藤孝幸さん(91)が出迎える。ガソリンスタンド経営などで築いた巨財を投じ、1979年、オープンにこぎ着けた。後藤さんは遠い目をして「若い頃はいろんな夢を描いたが、今はもう忘れてしまった」とツアー参加者に語りかけた。

ツアー参加者にあいさつする元所有者の後藤さん(右)。左はたびのレシピの広瀬さん

11万平方メートル

 レジャーランドは大崎市民の憩いの場である化女沼東岸にある。広さは約11万平方メートル。仙台市の榴岡公園や西公園と同じぐらいだ。

かつてのにぎわいの名残をとどめるメリーゴーラウンドと観覧車

 当時のパンフレットによると、遊園地には観覧車、メリーゴーラウンド、コーヒーカップ、空中ブランコ、ゴーカート、回転遊具、ミニSL、大型木製アスレチックがあった。今はすっかりさびて塗装は剥げ落ち、腐食が進む。ガラス部分は割れて散らばっている。

やぶの中にたたずむミニSLと観覧車

切なく、美しい

 4月16日にあったツアーには、全国から26人が参加した。ロリータファッションで写真のモデルをした東京の女性は「朽ち果てた遊園地は切なくもあり、美しくもある」とほれぼれした様子で話す。

 廃虚の写真撮影が趣味という大阪の男子大学生(19)は「変化の激しい世の中で、ここだけ時間が止まったような感じ」と心を躍らせた。

営業当時に使われていた化女沼レジャーランドのパンフレット(たびのレシピ提供)

 園内にはバーやサウナを備えたホテル、パークゴルフ場、ゴルフ練習場、2500人収容の野外音楽ステージ、室内ゲートボール場、そうめん流しとジンギスカンが売りの半屋外レストラン、バンガロー村もあった。参加者は解説を聞きながら一巡した後、夕方まで自由に散策できる。

類いまれな空間

 最盛期には年間20万人が訪れた。バブル崩壊後は客足が遠のき、閉園に追い込まれた。遊具は中古として他の遊園地や海外に売却されるのが一般的だ。しかし、後藤さんは再建の道を諦めきれず、施設や土地の切り売りを拒んできた。全国でも類いまれな異質な空間は、こうして生まれた。

風雨にさらされ、朽ち果てた観覧車のゴンドラ

 忘れられた場所に再びスポットを当てたのは映画「スープ・オペラ」(2010年公開、瀧本智行監督)。阿川佐和子さんの同名の小説を基にした映画のロケ地となった。夏草が絡みついたメリーゴーラウンドは作中、重要な役割を果たした。その後はテレビ番組のロケにしばしば登場。俳優新垣結衣さんが観覧車の前で高く跳び上がるシーンが印象的な証券会社のCMも話題になった。

子どもの人気を集めたメリーゴーラウンドの木馬

ツアーは大人気

 旅行会社たびのレシピ(仙台市太白区)は、2016年6月から開催する。これまで約30回。自社サイトとツイッターでしか告知していないが、毎回のように定員に達するヒット旅行商品だという。

実物の飛行機を転用した遊具

 募集企画チームマネジャーの広瀬雅州(まさくに)さん(53)は「最初は単純に『自分が見てみたい』と思って始めた。2、3回で終わると思っていた」と笑う。廃虚は全国に数多くあれど、反社会勢力の影響を受けず、一定の安全性を確保しつつ合法的に立ち入れる場所は限られているという。

ギャップに萌える

 常連客に魅力を聞いた。大崎市のパート女性(46)は6度目の参加で「ポジティブなパワーが充満していた頃を思い、今の荒廃した様子を見ると、そのギャップに心をギュッとつかまれる」と説明する。9度目の仙台市の会社員女性(45)は「これほど自由に巡れる廃虚は他にない。季節や時間帯の違いで毎回発見がある」と教えてくれた。

 レジャーランド跡地は、ツアー以外での立ち入りは禁止されている。所有権は4年前に東京の不動産会社に移った。同社は現況のまま買い手を募っている。閉園後の2003年に掘り当てた温泉の権利が付く。価格は今年4月現在、2億9800万円となっている。

「廃墟の聖地」化女沼レジャーランド

[ツアーの概要] 定員25人。午前9時JR仙台駅東口出発、午後6時帰着。バス代、弁当代などを含め、料金は1万円。次回は6月11、12の両日開催する。連絡先はたびのレシピ022(304)5565。

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