「子どもの急性肝炎」は新たな脅威か 県立こども病院・虻川副院長に聞く

アデノウイルス(国立感染症研究所提供)
虻川大樹宮城県立こども病院副院長

 欧米を中心に子どもの急性肝炎の報告が相次いでいる。アデノウイルスとの関連を指摘する声もあるが、現時点で明確な原因は分かっておらず、世界保健機関(WHO)は特定を急ぐ。どのような病気で、何に気をつけるべきなのか。宮城県立こども病院(仙台市青葉区)で子どもの肝疾患を多く診察してきた虻川大樹副院長(62)に話を聞いた。(編集局コンテンツセンター・竹内明日香)

「原因不明」はこれまでも

 ―子どもの急性肝炎を巡る国内の現状は。

 厚生労働省によると、2021年10月1日から22年5月26日までに、肝機能異常を示す数値が高く、一般のウイルス性肝炎であるA~E型のどれにも該当しない16歳以下の小児の急性肝炎例は、31件報告されている。

 ただ、この可能性例の定義は、非常に大まかなものだ。この31件が世界で報告されている原因不明の肝炎と同じ病気であるという確証はない。

 原因の分からない急性肝炎は、これまでも国内で一定数報告されてきた。約半年で約30例という今回の報告数は、従来に比べ著しく増加しているとは言えない。

 何かが起きているとしても、「未知のウイルスが出てきて、それがどんどん世界に広まっている」というわけではない、というのがわれわれの見解だ。

発熱やだるさ、腹痛から

 ―急性肝炎にかかると、どのような症状が出るか。

 子どもの肝炎では、発熱、だるさ、腹痛、嘔吐(おうと)などが先に出ることが多い。重くなると黄疸(おうだん)、尿が濃い黄色になる、便が白くなるといった症状が見られる。

 通常の急性肝炎であれば自然に治っていくので、ウイルスに対する治療はせず、対症療法となる。

「免疫応答」変化か

 ―アデノウイルスとの関連が指摘されている。

 英国では7割近い症例からアデノウイルスが検出されている。通常、肝炎を引き起こすことはあまりないウイルスだが、アデノウイルス感染の増加により、今回のような肝炎が出てきている可能性はあると思う。

 新型コロナウイルスが流行してから、子どもの感染症がぱたっと減った。コロナ対策で手洗いを励行したり、人との接触を避けたりした効果により、感染する子どもが減少したのだろう。

 アデノウイルスそのものが変異したということではないのではないか。子どもたちがこの2年ほど感染しなかったことで、免疫力が落ちて感染しやすくなったか、免疫が過剰に反応して強い症状が出るなど、「免疫応答」に変化があったのではないかと考えている。

オミクロン株と関係?

 ―新型コロナとの関連は。

 京都大の西浦博教授らは5月、小児の重症肝炎が報告される国では、新型コロナのオミクロン株感染者が多い傾向にあるとのデータを示した。さらなる研究が必要だが、この結果からは、オミクロン株に感染した後で免疫応答に何かしらの変化が生じたことも考えられる。

過度な心配は無用

 ―現段階で気をつけることは。

 子どもの具合が悪いときには、慌てず、まずはかかりつけの小児科医に見てもらう。もし、肝炎が疑われる症状が見られれば、専門の医療機関に送って診察となる。不安になり過ぎる必要はない。

 アデノウイルスの感染予防には、コロナと同様に手洗いが効果的。ただ、アルコールは効かないので、しっかり流水で洗うことが必要だ。

 過度な心配は無用だが、海外で症例が増加しているのは事実。国内でも、マスク着用の一部緩和など、コロナ前の生活様式が復活している。その結果、子どものアデノウイルス感染症が爆発的に増えたとき、欧米で報告されているような肝炎が国内でも急増するのではないかという危惧はある。

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