宮城県の対応「オープンデータ化に逆行」 防災アプリ「NERV」石森さん

特務機関NERV防災のロゴ(ゲヒルン提供)

 宮城県が津波浸水想定の1次データの公開に難色を示している問題を、251万ダウンロードを誇り「国内最速」と評されるスマホ防災アプリの事業者はどう見るのか。「特務機関NERV(ネルフ)防災」を運営する東京のITセキュリティー会社「ゲヒルン」の石森大貴社長(32)が河北新報社の取材に応じ、県の対応を「オープンデータ化の流れに逆行している」と批判した。(編集局コンテンツセンター・佐藤理史)

「マップ完成まで津波来ない保障ない」

 沿岸市町が作成するハザードマップより先に民間のマップができることに懸念を示す県に対し、石森さんは「ハザードマップが完成するまで津波が来ない保証はない」と指摘し、速やかな1次データ公開を促す。

 「県は行政と民間が出す情報に齟齬(そご)が生じるのを心配しているのだろう」と推察する。その上で「県の認識は(防災の常識と)真逆だ。行政も民間も一つの同じデータを基にしないと、それぞれが独自のデータを出してしまい、齟齬が広がる」と喝破する。

 国は民間が使いやすい形式でのデータ公開「オープンデータ化」を推奨する。行政が保有するデータは「国民共有の財産」として全て公開が原則だ。国の基本指針は誰もがデータを加工、編集、再配布できると定義する。公開に当たり、機械判読に適し、無償で利用できることなども求め、二次利用を積極的に勧める。

スマホアプリ「特務機関NERV防災」の画面。視認性に優れたデザインも好評を得ている(ゲヒルン提供)

「情報ない方がむしろ混乱招く」

 県河川課の担当者が「住民に情報を与え過ぎると、迷ってしまう」と発言したことにも触れ「住民の情報リテラシーを信用せず、避難の主体となる住民が情報にアクセスできない状況をつくり出している。情報の取捨選択は住民に任せるべきで、情報がない方がむしろ混乱を招く」と反発する。

 県は浸水の深さを8段階で色分けした想定図をPDF形式でホームページ(HP)に公開している。1次データには1センチ単位の浸水深などの詳細な情報が含まれていることを踏まえ「ネットなら、もっと活用できる」と強調する。

 「まさに自分の家はどうか、逃げる経路により危ない箇所はないか。そうした個人の細かなニーズに、今の県の姿勢では応えることはできない」

 ネルフのアプリはスマホの位置情報や登録地点と連動し、ユーザーに関係の深い情報を選んで表示、通知することができる。「大勢に向けて分かりやすく情報を伝えるマスメディアを含め、それぞれが強みを持つ領域で役割を分担することが重要だ」と訴える。

ゲヒルンの石森大貴社長=2019年2月

震災で石巻・渡波の実家全壊

 石森さんは大学生だった時に起きた2011年の東日本大震災で宮城県石巻市渡波の実家が全壊、親戚や知人が犠牲となったのを機に、早く正確で分かりやすい災害情報の提供に情熱を傾けてきた。

 「県がデータを出し渋るのを見ると、震災の反省をどこに生かしているのか疑問に感じる。報道機関やアプリ事業者だけではなく、最終的には住民の避難行動に深く関わることを思うと、こんな対応はあっていいはずがない」と静かな怒りを示す。

[特務機関NERV防災]全国瞬時警報システム(Jアラート)や災害情報共有システム(Lアラート)、気象庁から専用回線で提供される地震、噴火、津波、大雨のデータなどを独自のプログラムで瞬時に利用者が見やすい形式に変えて発信するアプリ。NERVは人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する組織で、作中でネルフが「使徒」と呼ばれる敵の襲来を告げるように、災害発生を速報する。19年にリリースされ、251万のダウンロード数を誇る。10年に開設したツイッターのフォロワーは約168万。

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