「絵本で」「親子で」平和学ぶ 戦後77年の夏 市民団体は読み聞かせ、書店もPRに注力

 ロシアのウクライナ侵攻のニュースに、「戦争はなぜ起きるの」と子どもに聞かれた人もいるかもしれません。平和について学ぶきっかけの一つに絵本があります。コーナーを特設するなど書店側もアピールに力を入れています。太平洋戦争終結から77年目の夏。子どもも大人も静かにページをめくるひとときを過ごしませんか。(生活文化部・長門紀穂子)

紀伊国屋書店仙台店の特集コーナー

 「戦争や平和を子どもに伝える手段に絵本が選ばれているのではないか。関心の高まりを感じる」。紀伊国屋書店仙台店(仙台市)で児童書を担当する室和未さん(39)が実感を込める。店は4月、0歳から小学校高学年向けの絵本、児童書を紹介するコーナーを設けた。

 「普段なら戦争や平和関連はそれほど売れない」(室さん)という状況が変わったのは、ウクライナ侵攻が始まった2月末以降。「孫に読ませたいが、分かりやすい本はないか」などと声をかけられることが増えたのを受け、設置に踏み切った。終戦記念日を控え、作品数は当初の9から20ほどに拡大した。

 作品は、世界征服にまい進する架空の国を描いた海外の寓話(ぐうわ)「せかいでいちばんつよい国」から、沖縄全戦没者追悼式で朗読されたこともある詩「へいわってすてきだね」までさまざま。日本で読み継がれているウクライナ民話「てぶくろ」も関連書扱いしており、隣にはロシア民話「おおきなかぶ」を置いている。

 室さんは「これほどの規模の展示は初めて。触れて好きだと感じた本を読んでもらいたい」と話す。

 ヤマト屋書店仙台三越店(同)も、話題の作品を集めたコーナーの一角で、3月から平和や戦争を題材にした絵本、児童書を紹介している。詩人谷川俊太郎さんが手がけた話題作「へいわとせんそう」、ナチス・ドイツの迫害からユダヤ人を救った外交官のノンフィクション「杉原千畝物語」など、作品を入れ替えながら常時6点を陳列する。

 児童書担当の鈴木典子さん(44)によると、人気は日中韓の作家12人が共作した「へいわってどんなこと?」。いつでもご飯が食べられること、朝までぐっすり眠れること―。平易な言葉を使い、子どもの視点で平和の意味を問いかける絵本だ。

 鈴木さんは直接的に戦争を描いたものではなく、国を超えて人々が仲良くする話や命の大切さを伝える作品を選んでいる。「子どもたちはもちろん、戦争をテレビやネットでしか知らない大人たちの心にも響くよう願っています」

みやぎ親子読書をすすめる会お薦めの作品

感想求めず楽しんでーーみやぎ親子読書をすすめる会

 本を通じて平和の尊さを学んでもらおうと、読み聞かせなどに取り組む市民団体も心を砕く。

 仙台市の「みやぎ親子読書をすすめる会」は1971年から、子どもが読書に親しむ機会を提供してきた。95年の戦後50年を機に、節目ごとに市内の図書館で「戦争と平和を考える絵本展」を開いている。

 平和を題材にした絵本を勉強会や読み聞かせでたびたび取り上げているが、酒井文子代表は「戦争はいけないとストレートに表現する作品は選ばない」と話す。動物同士のけんかといった寓話的な表現でも、子どもたちは十分に理解できるという。

 酒井代表は大人が声に出して読むことも勧める。「言葉の意味は分からなくても、思いを込めれば赤ちゃんでも伝わる」。無理に感想を求めず親子で楽しむこと、折に触れ読み返すことも大切だ。「大人になった時に気付けばいいかなというくらいでちょうどいい。一緒に本を読める日常こそが平和なのだから」

会のお薦め作品

 みやぎ親子読書をすすめる会が読み聞かせなどで取り上げている作品から、平和を題材にした絵本を教えてもらった。

  ■  ■  

「なぜあらそうの?」(BL出版)

 カエルから花を奪ったことで、ネズミは戦いを続けることに。最後に残ったのは誰か。ほのぼのとしたタッチの絵だけで物語が進む。ニコライ・ポポフ著。

「もっとおおきなたいほうを」(福音館書店)

 立派な大砲を撃ちたくてしょうがない王様。念願かなって目障りなキツネを大砲で追い払うと予想外の展開に。ユーモアたっぷりの寓話。二見正直著。

「おひさまとおつきさまのけんか」(ポプラ社)

 小さなことがきっかけで太陽と月の仲が悪化する。私たちには遠い場所の出来事と思いきや実は…。著者は「ねないこだれだ」などで知られるせなけいこ。

「世界中のこどもたちが」(ポプラ社)

 紛争や貧困など、さまざまな状況で生きる子どもたちの豊かな表情を捉えた。幼児や小学生に人気の童謡が添えられている。篠木真写真、新沢としひこ詞。

「つつみのおひなっこ-仙台空襲ものがたり」

 仙台市の伝統工芸堤人形のひな人形を軸に、少女の視点から仙台空襲を描いた。野本和子、高倉勝子著。絶版だが市図書館で閲覧できる。

[メ モ]みやぎ親子読書をすすめる会は、毎月第2土曜に仙台市青葉区のエル・パーク仙台で絵本を持ち寄って読み聞かせや作品の理解を深める大人向けの勉強会を開いている。参加費は200円(子ども連れ可)。連絡先は酒井代表022(228)1776。

本屋さんのお薦め作品

 平和がテーマの児童書や絵本は多彩。紀伊国屋書店仙台店とヤマト屋書店仙台三越店の児童書担当にも、お薦め作品を紹介してもらった。

 「おなじ月をみて」(ジミー・リャオ作、天野健太郎訳、ブロンズ新社)

 月がよく見える窓辺で外を眺める小さな男の子ハンハン。誰かを待っているのですが、ゾウ、ツルなどけがをした動物たちが次々と彼の元にやってきます。最初は平和の祈りを込めた作品と知らず、美しい絵に引かれ夢中で読みました。台湾の人気絵本作家による作品です。

 「ももちゃんのピアノ 沖縄戦・ひめゆり学との物語」(柴田昌平文、阿部結絵、ポプラ社)

 沖縄・ひめゆり学徒のお話。日常や家族を失いながらも大好きなピアノと音楽を生きる力に、第2次大戦、戦後を生き抜いた女性を描いたノンフィクションの児童書です。気仙沼市出身のイラストレーター阿部結さんが絵を担当しているので注目してみてください。

 (紀伊国屋書店仙台店・室さん)

 「チロヌップのきつね」(たかはしひろゆき作、金の星社)

 キツネの親子が暮らす北海の小さな島チロヌップ。やがて戦争が島にも影を落とします。人間に翻弄(ほんろう)される様子や、キツネ親子の愛情を通して、生き物の共存や平和について考えさせられます。小学生の頃に初めて読み、今も好きな本。優しい絵のタッチも心に染みます。

 「へいわとせんそう」(たにかわしゅんたろう文、Noritake絵、ブロンズ新社)

 詩人谷川俊太郎さんによる平和絵本。「へいわのボク」「せんそうのボク」、「へいわのぎょうれつ」「せんそうのぎょうれつ」。戦時と平時の人や場所を見開きで見せる構成です。仕事柄たくさんの作品に触れていますが、シンプルな言葉と絵でこれだけ伝えることができるのかと驚きました。

 (ヤマト屋書店仙台三越店・鈴木さん)

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