ミニ避難訓練から要配慮者の対応考える 中国新聞社と共催して広島で「むすび塾」
東日本大震災の教訓を将来の災害への備えに生かすため、河北新報社は5日、防災ワークショップ「むすび塾」を広島市安佐南区の山本学区で開いた。中国新聞社との共催で通算108回目。大雨による土砂災害が懸念される地域で、要配慮者の災害対応を想定したミニ避難訓練を行い、備えの課題と解決のヒントを探った。
山本学区は住宅の後背地に山が迫り、傾斜地に並ぶ家屋の間を細い道が縫うように通っている。2014年8月の広島土砂災害で犠牲者が出たほか、昨年8月も豪雨による土石流が発生し、住宅や農地に土砂が流入する被害を受けた。
訓練では、車いす利用者役と介助者役の広島経済大生2人組と、小学生の孫と祖父のペアがそれぞれ、自宅から指定避難場所の山本小への経路をたどり問題点を確認。住民ら約30人が見守った。
訓練後に集会所で開いた語り合いでは「実際に避難してみて危険箇所が分かった」「介助が必要な人を手助けをしたいけれど、学生は地域と関わる機会が乏しい」「避難を始めるタイミングが分からない」といった感想や意見が出た。
助言者として参加した減災・復興支援機構専務理事(東京)の宮下加奈さん(53)は「少ない人数でもいいので、地域や対象、設定を変えて訓練すると、いろんなことに気付くはずだ。訓練とイベントと組み合わせるなどして、地域の防災活動の裾野を広げてほしい」とアドバイスした。
河北新報社は震災の教訓伝承と防災啓発を目的に2014年から地方紙と連携するむすび塾を各地で実施。共催むすび塾は通算17回目となる。中国新聞社との共催は初めて。
「訓練重ね、意識根付く」石巻の被災者が広島経済大で教訓語る
防災ワークショップ「むすび塾」の開催に合わせて河北新報社は5日、中国新聞社と共催で「東日本大震災を忘れない-被災体験を聞く会」を、広島市の広島経済大で開いた。石巻市の被災者2人が震災の教訓を語り、地域の住民、学生ら約30人が聴講した。
石巻市民生委員児童委員協議会副会長の蟻坂隆さん(72)は、津波で被災した同市八幡町で要配慮者の避難支援に取り組んだ経験から「1人で歩行ができるか否かや病気の有無など、住人の情報を事前に把握しておくことが迅速な避難につながる」と強調した。
同市の小規模多機能型居宅介護「めだかの楽校」管理者の石山うみかさん(45)は、楽校を含む「めだかグループ」の利用者と職員が海に近い施設から速やかに避難した経緯を説明。「避難場所や経路を決めていたので、迷わず行動できた。訓練を重ねることで防災の意識が根付く」と話した。
話を聞いた広島経済大3年の都はるかさん(21)は「日頃から地域と連携することが大切だと学んだ。高齢者が多い地域の中で、学生ができることを模索したい」と感想を述べた。
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