次世代担う人材増やしたい 盛岡・荒屋敷武則さん<先輩に聞く・チャレンジ防災士(4)>
東日本大震災後に河北新報社に入った若手記者4人が10月、防災士資格に挑戦した。試験には無事合格したものの、肝心なのは得た知識を報道や日常生活にどう生かせるかだ。東北で活躍する防災士3人に、資格取得を目指したきっかけや、仕事や生活への活用法を聞いた。
盛岡市の荒屋敷武則さん(66)は、2016年の台風10号で甚大な被害が出た岩手県岩泉町でボランティア活動に携わった経験から防災に関心を持ち、17年に資格を取得した。21年からは日本防災士会岩手県支部副支部長を務め、県内各地で備えの大切さを伝えている。(盛岡総局・横川琴実)
―なぜ防災士になろうと考えたのですか。
「台風10号で被害を受けた岩泉町安家地区で、泥かきのボランティアをしました。まるで戦場のような光景を目にし、自然災害の恐ろしさを感じました。災害で犠牲者を出さないための一助になりたいと思い、取得を決意しました」
―どんな活動をしていますか。
「年に4、5回、町内会や学校を対象に講演をしています。いつも『聞きに来てくれた人たちの命を守る』という強い思いを持って臨んでいます」
「行政は一律で避難情報を出しますが、要介護者やペットがいるかなど各家庭によってリスクは異なります。避難のタイミングと、それまでにどんな行動をすべきか。自分で考えることが大切だと訴えています」
―岩手県大船渡市など3市町であった10月の総合防災訓練ではDIG(災害図上訓練)の講師を務めました。
「シールや付箋を使い、住民に地域の指定避難所の位置や危険箇所について考えてもらいました。震災で被災した沿岸部で講師を務めたのは初めてで、重圧もありました。参加した小学校の先生から『学校でもやってみたい』との声も聞き、住民に受け入れてもらったように感じています」
太陽光パネルの充電器自作
―自宅ではどんな災害対策をしていますか。
「わが家では3年前、地震対策としてワイヤなどを使って家具を固定しました。天井と棚の間に板を挟み込むことも転倒防止に有効です。備蓄食の保管には、日常的に食べて買い足す『ローリングストック』を活用しています。停電に備え、太陽光パネルを使った充電器も自作しました」
―今後の目標を教えてください。
「全国各地で災害が頻発し、復旧を支援するボランティアの存在がさらに重要になったと感じています。活動に便利な道具を企業などと連携して開発したいと思っています」
―防災士を目指す人にメッセージをお願いします。
「年配の防災士が多いように感じますが、若い人の方が今後、災害に遭う可能性は高いと言えます。次世代を担ってくれる人材が増えてほしいと願います。災害時に助けられる人から1人でも多く助ける人になることで、より多くの命が救われるはずです」
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東日本大震災の発生から13年。あの日を知らない若い世代が増える中で、命を守る教訓を伝え継ぐために何ができるのか。震災後に河北新報社に入社した記者たちが、読者や被災地の皆さんと一緒に考え、発信していきます。
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