いしのまき食探見>ワカメ 肉厚、北上川が育てる食感
海と山とで育まれる豊かな石巻地方の食材。伝わる文化と技を生かした郷土の「食」を紹介する。
ワカメ
石巻市北上町十三浜のブランドと言えば海藻、わけてもワカメは筆頭だ。
20日、十三浜の一つ大指(おおさし)漁港沖にあるマルナカ遠藤水産の養殖場を訪ねた。昨年11月に種付けしたワカメは北上川が運ぶミネラルを取り込み、外洋の適度な揺れが肉厚でシャキシャキした食感のワカメに育てる。
代表の遠藤俊彦さん(48)がワカメの成長具合を確かめる。西に目を向けると北上川の河口が見えた。
収穫したワカメは漁港へ。湯通しすると鮮やかな緑になる。もうもうと上がる湯気と、磯の香り。ゆでた後は素早く冷水へ。塩を絡め、1日置いて芯抜きと脱水をすると塩蔵(ボイル)ワカメの完成だ。葉の硬さと形、香りの三つがそろったものが最高品。作業工程には各養殖業者が代々積み重ねてきたノウハウと、切磋琢磨(せっさたくま)が込められる。
毎日のように漁場に足を運ぶ遠藤さんは「水温や潮の流れ、風などわずかな気候変化でさえ一日の成長量が変化する。最高の旬を見極めて収穫する。本当においしいものだけを届ける」と話す。
販路維持のため、互いに顔を見合わせる販売会に参加したり、ホームページ(HP)の充実などPRに努める。HPには遠藤さんの妻奈津さん(44)のコーナー「なっちゃんの台所」がある。海藻を使ったメニュー「そうめん昆布のサラダ」「茎わかめの中華風和え物」などを紹介している。
十三浜を石巻市のみならず、県の代表ブランドへ。精進は続く。
(佐藤紀生)
<メモ>
ワカメは万葉集にも登場するなど、古くから日本人に親しまれてきた海藻。十三浜でワカメ養殖が始まったのは1947年ごろ。現在、宮城、岩手両県の生産量が全国の7割を占める。東日本大震災で甚大な被害を受けたが、販促への努力を重ねている。
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