絵本「帰ってきた小船」を小説化 雄勝出身の伊藤さん自費出版
東日本大震災の津波で流された石巻の釣り船がハワイ・オアフ島に漂着し、その後、奇跡の帰還を果たした実話をベースに、石巻市雄勝町出身の伊藤浩さん(63)=仙台市宮城野区=が小説「再会」を自費出版した。
震災発生から5年目の3月11日に帰還を果たした釣り船の出来事は英訳付きの絵本「帰ってきた小船」として、2017年3月11日に三陸河北新報社から発刊されている。当時、同社に勤務し、文章を担当したのが伊藤さん。「再会」は絵本の小説化でもある。
伊藤さんは震災の津波で実母を亡くしている。十三回忌を前に「何か形になるものを残したい」という思いで執筆したという。
作品は小船の発見から宮城水産高の生徒を乗せた県の実習船に積み込まれて石巻に帰還するまでの様子が描かれている。主人公で新聞記者の順一に、帰還に奔走した一人でもある伊藤さん自身を重ねている。
奇跡の帰還というドラマに加え、それを実現させた人と人とのつながり、支え合いの大切さなどが描かれている。伊藤さんは「小船の帰還は歴史的事実で、語り継がれていくことを望む」と話す。
表題作に加え短編2編を収録している。表紙は絵本発刊時に絵を担当した仙台市在住のファンタジー画家石川かおりさんが担当した。
三越仙台店などヤマト屋書店全店、三陸河北新報社で取り扱っている。定価1200円。
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