石巻舞台の創作童話、後世に 1929年出版「陸奥の桃太郎」 筆者の孫、市に原本寄贈へ
桃太郎伝説に基づき、石巻地方を舞台にした童話「陸奥の桃太郎」の原本が見つかった。所有する仙台市青葉区の桑島茂さん(85)は「作品を広く後世に伝えたい」と、自身の古里でもある石巻市に寄贈することを決めた。「子どもから大人まで幅広い世代が知る有名な話。地元に関心を持つきっかけにしてもらえればうれしい」と話す。
「桃太郎」の伝説は岡山県をはじめ石巻地方や愛知県犬山市や高松市などにも伝わる。陸奥の桃太郎も主人公の桃太郎が犬、猿、キジと鬼退治に向かって財宝を持ち帰るストーリーは同じだが、石巻市北村の旭山に「桃太郎神社」と名の付く神社が残るなど石巻地方との関わりを感じさせる。旭山がある同市河南地区は合併前は「桃生郡」でもあった。
陸奥の桃太郎は同市須江出身の桑島さんの祖父正さんが伝説を調べて創作し、1929年に出版した。北上川を流れてきた桃から桃太郎が誕生したことや12歳で旅に出発し、宝の山で鬼ケ島と呼ばれた金華山に向かう様子がつづられている。作中には給分浜や狐崎といった石巻の地名も数多く登場する。
幼くして亡くなった正さんの長男の七回忌法要のために作られ、同市大谷地、鹿又、桃生の小学校や個人に配られた。戦争へとかじを切る時代背景もあり、桃太郎は国民を結束させるプロパガンダの役割もあったと考えられるという。
見つけた桑島さんは自宅で保管していたが、近年は病気などもあって家の物の整理をしていた。数年前から解読も進めてきたが、全てを解き明かすことはできず、寄贈を決めた。
桑島さんは「歴史に詳しい人が見れば、さらに深い内容や新たな事実も判明するのではないか。できるだけ多くの人の目に留まるといい」と期待している。
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