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いしのまき食探見>タラコ 手仕事で守る伝統の味

生でよし、焼いてよし、さまざまな味わい方が楽しめる
国際的な食品衛生管理認証「HACCP(ハサップ)」に対応したマルイチ高橋商店の工場

 海と山とで育まれる豊かな石巻地方の食材。伝わる文化と技を生かした郷土の「食」を紹介する。

タラコ

 ご飯のお供やおにぎりの具としてはもちろん、パスタやあえ物、メイン料理を引き立てるソースなど、さまざまな調理法で楽しめるタラコ。プチプチとした食感と濃厚な味わいで、老若男女に愛される。近年は、石巻市のふるさと納税返礼品としても人気が高い。

 同市でタラコの生産が盛んになったのは、北洋漁業の基地として栄えた昭和40年代ごろから。50社以上が立地し、日本一の生産量を誇った。200カイリ規制や東日本大震災などの影響で、現在は5、6社まで減ったという。

 1980年に創業した湊水産(石巻市吉野町)の木村一成社長(64)は「創業当時は商品を作っても作っても足りず、日曜も祝日もなかった」と振り返る。

 同社は手間暇を惜しまず、職人による「手漬け」にこだわる。調味液に漬けたタラコをひと腹ひと腹熟成具合を確かめながら手で返すことで、味が均一で完熟した製品に仕上がる。

 木村社長は「タラコは生き物。手をかけ、おいしいと言ってもらえる商品を届け続けたい」と話す。

 昨年創業50年を迎えたマルイチ高橋商店(同市小船越)では、毎日約40人の従業員が成形や選別などを手作業で行う。高橋健常務(35)は「色合いや粒立ちを確かめながらの作業は、機械に取って代わられない」と説明する。

 「タラコは主役にも脇役にもなれるいい役者。もっと食べたいと思ってもらえるものづくりを、丁寧に続けていきたい」と語る。
(奥山優紀)

<メモ>
 タラコはスケトウダラの卵巣で、近年は米国やロシア産の原料が主流。高橋商店によると、冷凍品は冷蔵庫でゆっくり解凍するのがおいしく食べるポイント。同社はできたて製品の販売会、湊水産は体験型イベントを開き、石巻のタラコをPRしている。

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