女川原発再稼働訴訟 仙台地裁、差し止め請求を棄却 「事故の危険性、立証ない」
重大事故に備えた避難計画に実効性がないとして、石巻市の住民17人が東北電力に女川原発2号機(女川町、石巻市)の再稼働差し止めを求めた訴訟で、仙台地裁は24日、原告側の請求を棄却した。原告側は控訴する方針。
原発の避難計画に争点を絞った訴訟は全国初で、計画の不備が運転差し止めの理由になるかが最大の争点だった。
斉藤充洋裁判長は「運転再開によって重大事故が起こる具体的危険性を原告側は立証しておらず、避難計画の実効性をもって運転差し止めを求めることはできない」と述べた。計画の是非には言及せず「実効性の個別の争点を判断するまでもない」と原告側の主張を退けた。
原告団の原伸雄団長は「門前払いで、受け入れ難い判決だ。提訴からの2年間は何のための時間だったのか」と語った。東北電は「当社の主張を理解いただいた結果だ。避難計画の実効性向上に向け、できる限りの協力をしていく」とのコメントを出した。
原告側は2021年5月に提訴。「渋滞など多岐にわたる問題があり、実効性のかけらもない」「計画に沿って避難することで命を失う人が出る」と主張した。東北電は「事故が起こる具体的な危険性を原告側が立証する必要がある」「避難計画は政府の原子力防災会議で合理性が認められている」と反論していた。
原告の住民らは避難計画の不備を理由に19年11月、再稼働の前提となる県と石巻市の地元同意の差し止めを求める仮処分を仙台地裁に申請した。地裁は20年7月に申し立てを却下、仙台高裁は同10月に即時抗告を棄却した。
女川原発の広域避難計画は、原発30キロ圏の7市町に住む計約20万人が県内31市町村に避難する。各市町は17年3月までに計画を策定。内閣府や県などでつくる女川地域原子力防災協議会が取りまとめ、20年6月に政府の原子力防災会議で了承された。
女川原発は東日本大震災後、全3基が停止。2号機は20年2月に原子力規制委員会の新規制基準適合性審査に合格した。東北電は24年2月の再稼働を目指している。
石巻地方3市町の首長「避難体制充実努める」
東北電力女川原発2号機(女川町、石巻市)の再稼働差し止めを求める訴訟で、仙台地裁が24日、住民側の訴えを退けたことを受け、原発5キロ圏内の予防的防護措置区域(PAZ)の石巻市と女川町、5~30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)に入る東松島市の各首長らは「訴訟の当事者ではないのでコメントは差し控える」などと発表した。
原発30キロ圏内で人口が最も多い石巻市の斎藤正美市長は「関係機関と連携し、原子力防災訓練の実施や検証をしていく」とのコメントにとどめた。
女川町の須田善明町長も「原子力防災の充実・強化は不断の取り組みであり、さらなる避難計画の実効性の向上に努める」とする談話を発表した。
県は原子力防災訓練について、本年度スマートフォンの避難支援アプリを活用した住民避難訓練をPAZと「準PAZ」からUPZの住民に拡大する方向で検討している。村井嘉浩知事は「原発周辺の防災体制については、継続的に検証や改善に努める」とさまざまケースを想定し、改善点を探る姿勢を見せた。
UPZに当たる東松島市の渥美巌市長は原発の安全性について「事故が起こらないことが大前提。住民は不安もあるが、再稼働の条件として安全性が担保されているはずだ」と話した。避難に関しては「県がアプリを取り入れ、避難時にスムーズに動けるようになっていくのだと思う。避難退域時検査場所に向かう県道など、避難道路の整備は必要だ。国や県と連携して進めたい」と語った。
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