古里賛歌高らか 新演出の下「カンタータ」、市民の力結集 280人出演
市民手作りのカンタータ「大いなる故郷石巻」(石巻市文化協会主催)公演が28日、石巻市開成の市複合文化施設(マルホンまきあーとテラス)大ホールで開かれ、新しい演出による古里賛歌が繰り広げられた。客席を埋めた市民は郷土・石巻の素晴らしさを再確認すると同時に、希望と生きる勇気を受け取った。
カンタータは石巻の歴史や産業、文化、自然などをうたった4楽章から成る交響詩で、1973年から10年ごとに公演されてきた。今年は初演からちょうど半世紀に当たり、市民の力が結集した舞台となった。
俳優の三國裕子さん(72)の総合演出の下、朗読や合唱、オーケストラ、日本舞踊に加えて、第2楽章「たたら火」では斎太郎と妻の悲しい愛の物語を芝居とモダンバレエで表現。慶長遣欧使節の支倉常長を描いた第3楽章「雄図」ではフラメンコが舞った。総合芸術に進化したカンタータの世界に観客を引き込んだ。
舞台には3歳から90代までと世代を超えた総勢約280人が立ち、新型コロナウイルス禍を乗り越えての10年に1度のカンタータを楽しんだ。東日本大震災後、石巻市を支援してきた埼玉県和光市からも有志約20人が駆けつけ、カンタータに再生と復興の願いを込めて共演した。
フィナーレでは出演者全員が勢ぞろいし、客席からの拍手が鳴りやまなかった。観覧した70代の女性は「大川地区で津波の被害に遭い、今は市内の別の場所に住んでいるが、生きる勇気をいただいた」と感激した。
モダンバレエで初めて参加した武田真由子さん(22)=東京都、石巻市出身=は「今だからこそ創り上げることができたカンタータ。これからも引き継いでいきたい」と語った。
三國さんは「みんなの力で古里石巻の素晴らしさを伝えることができた。これを第一歩に総合芸術としてのカンタータに育てていってほしい」と強調した。
カンタータの前には「次世代へ継ぐ伝統・伝承芸能」と題して雄勝町伊達の黒船太鼓、桃生町寺崎はねこ踊り、北上町女川法印神楽も披露された。
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