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ペーパードライバー支援 石巻市、移住者対象に補助新設 記者が講習体験

「右に寄って走っている」と指摘され、車幅感覚を教わる記者(左)

 石巻市は本年度、移住者を対象にペーパードライバー講習の受講料を補助する制度を新設した。市内での生活に欠かせない運転への苦手意識を和らげ、移住者の安心につなげる狙いだ。制度の効果はいかほどか。学生時代を東京で過ごし、2月末に市内に移住した新人記者(24)が制度を使って講習を受けてみた。

 記者がオートマチック車限定の普通免許を取得したのは2020年11月。しかし、運転する機会は半年に1回ほどしかなかった。市内への転居を機に3月、軽自動車を購入。2カ月間毎日のようにハンドルを握り、運転への自信が芽生えてきていた。

 同市泉町4丁目の石巻第一自動車学校で、補助制度の上限となる2回の講習を連続して受けた。指導は同校教習部次長の阿部嘉和さん(52)が担当してくれた。

 手始めに教習所構内のコースを回った。S字コーナーもクランクも難なくこなした。「余裕、余裕」と、手応えを感じたのはつかの間だった。阿部さんは停車を指示し「右に寄っている」と告げた。

 記者はもちろん、真ん中を走っているつもりだった。慣れない教習車のせいだけではないらしい。阿部さんは「1人乗りの車に乗っている感覚で運転してみて」とアドバイスしてくれた。意識してみると、苦手だった左側に寄せる停車もうまくできた。

 教習所外に出て湊や大街道、JR石巻駅周辺などを走ると、基本的な動作の不備を次々と指摘された。右折、左折時のサイドミラーの確認。ウインカーを出すタイミングの遅れ。飛ばす車が多くて車線変更に恐怖心があった石巻バイパスでは、ミラーを見ようと必要以上にキョロキョロしてしまった。阿部さんは「右折するなら最初から右車線を走っていても大丈夫」と優しく導いてくれた。

 ペーパードライバーは免許上の運転歴ばかりが長くなり、教習所で培った感覚はどんどん薄れていく。「事故を起こしてないから」とおごらず、運転を客観的に評価してもらうことは貴重な体験になると感じた。(石井季実穂)

活用回数に制限、周知も課題

 制度創設の狙いを市SDGs移住定住推進課の担当者に聞いた。

 制度は、市内への移住者や移住希望者から運転に対する不安の声が実際に聞かれたため、南相馬市や宮崎県都城市などの先行事例を参考にして設計した。担当者は「石巻は車社会。運転の不安を取り除き、市内での生活に慣れてもらいたい」と説明する。

 人口減少が続く中、移住促進は最重要課題の一つだ。「数ある自治体の中から石巻市を移住先に選んでほしい。ペーパードライバーの支援制度はあまりなく、差別化を図りたい」と語る。

 気になったのは1人2回までの活用回数の上限。ペーパードライバーの中には「アクセルを踏むのも怖い」という人もいる。2回で不安を解消するのは難しいケースもある。

 担当者は「限りある財源でより多くの人に助成するため」と説明する。一方で、6日現在の申請は1件、問い合わせも2件のみで、制度の周知が課題だ。予算上の利用件数は約20件と想定し、上限に達し次第、受け付けを終える。

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