よみがえる郊外団地 仙台・鶴ケ谷 若年層流入で児童が増加
造成から半世紀ほど経過した仙台市郊外の住宅団地で、小学校の児童数が増えている。少子高齢化の影響で減っていた子育て世帯がここ数年、住民が離れた土地に分譲された建売住宅を購入しているためだ。「元気でにぎやかな子どもたちの様子を見てほしい」。既存のコミュニティーに若い世代が流入する宮城野区鶴ケ谷地区の住民から「読者とともに 特別報道室」に情報が寄せられ、取材した。
住宅販売好調、交流の場も
「児童が多ければ多いほど、一人一人のコミュニケーション能力も育まれ、できる行事の幅も広がる」
宮城野区の鶴谷小(児童464人)の小田暁校長は、校庭を駆け回る子どもたちを眺めながら、児童数の増加に伴う相乗効果を説明する。
2023年度は89人が入学。2~6年生の転入生14人も迎え、児童数は381人だった10年前と比べて83人増えた。1学年2学級の編成が長らく続いたが、最近は1~3年生が入学時から3学級、4年生も23年度は3学級となった。
小学校がある鶴ケ谷団地は1968年に分譲が始まり、ピークの75年には2万人を超えた「ニュータウン」。2009年に約1万2000人まで減ったものの、近年は人口が増加に転じている。若い世代をターゲットにした住宅販売が好調とみられる。
7年前から鶴ケ谷地区に住み、長男が鶴谷小に通うPTA会長の長谷部美紀さん(49)は「住み始めた当時は空き家や空き地が多かったが、ここ2、3年は通りで見かける子どもの数がぐっと増えた」と実感を込めて言う。
若年層の流入で、地域に活気が戻りつつある。以前から住む人たちが重視するのは、世代を超えた交流の場の創出だ。
4月にあった住民団体主催のイベント「鶴ケ谷まるっとフェスティバル」。地区内の学校や企業など計23団体が飲食ブースや的当て、自転車競技「BMX」体験といった遊び場を設けた。大勢の親子連れが訪れた会場には、子どもたちの歓声が上がった。
主催団体の「まるっとつるがや」事務局長の小野武さん(67)は「新しい住民は共働きも多く、地域との接点を持ちにくい。多様な機会を通じて顔見知りになり、何かあれば支え合える関係を築きたい」と意義を強調する。(鈴木悠太)
高止まりする都心部マンションに比べ値ごろ感
仙台市郊外の住宅団地がなぜ、若い世代に注目されているのか。背景には、価格が高止まりする都心部のマンションより、郊外の比較的購入しやすい建売住宅を求める市内の住宅事情があるようだ。
市内の不動産関係者によると、郊外は260平方メートル前後あった宅地を分割して新築された住宅が増えている。広い庭を求めない子育て世帯の需要に加え、周辺に商業施設が立地する条件も重視されているという。
宮城野区鶴ケ谷地区の鶴谷小と同様の傾向は、1955年度以降に住宅団地が開発された市内の別の地域でもみられる。この10年間で八木山小(太白区)、鶴が丘小(泉区)なども児童数が増加している。
不動産調査会社シーカーズプランニング(仙台市)の佐々木篤社長(61)は「市内のマンション価格は高騰し、手を出しにくい。泉中央や長町といった副都心の地価も高いのに対し、郊外の値ごろ感が好評の要因だろう」とみる。
市も子育て世代の「郊外回帰」の流れなどを踏まえ、一戸建てを取得する際の支援事業を展開する。担当者は「若い世代が入ることで、地域に新たな活力が生まれる」と期待を寄せる。
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