絵手紙交流12年、これからも 千葉・市原の潤間さん、石巻の鈴木さんを訪問
石巻市前谷地の訪問看護師、鈴木恵子さん(54)のところに毎月、明るくやさしい言葉に季節を伝える絵が添えられた絵手紙が届く。送り主は千葉県市原市の主婦、潤間(うるま)里子さん(73)。東日本大震災後、約12年にわたり、毎月送り続けている。今月4日には、鈴木さん宅を潤間さんが訪ね、昨年3月以来2度目の対面を果たした。
鈴木さんが潤間さんの絵手紙に初めて触れたのは2011年夏。当時、前谷地小6年生だった長女の清香さんが学校から持ち帰った。日本絵手紙協会の被災地に絵手紙を送る企画に参加した潤間さんの作品だった。
「明けない夜はない」。紫色のニラバナの絵に、力強い励ましの言葉が添えられていた。被災した自宅で家族7人が暮らし、看護師の仕事にも追われていた鈴木さんの心に染みた。「絵手紙の一言に救われた。言葉の力で前向きになれた」と当時を振り返る。
鈴木さんは番地が伏せられていたその絵手紙の住所に思い切って返事を送ってみた。手紙は潤間さんに届き、2人がつながった。「奇跡だと思った。毎月、鈴木さんに絵手紙を送ろうと決めた」(潤間さん)。交流が始まった。
「励まさなければいけない私の方がやさしさと勇気を頂きました」「あなたと出会えたことに感謝です ありがとう」-。潤間さんから届いた2通目の絵手紙は長さ約1メートルの和紙に感謝の言葉と春を告げる菜の花が描かれていた。「この手紙があって今の私がいる」と鈴木さん。人生の支えになった絵手紙は部屋の壁に大切に飾られている。
2人は電話をしたり、贈り物をし合ったりして交流を深め、昨年3月には鈴木さんが千葉を訪ね、初めて対面。「思わず手を取り合った」という。今回は潤間さんが石巻を訪問。鈴木さんが大切に保管している潤間さんからの絵手紙を前に、これまでを振り返り、会話に花を咲かせた。
鈴木さんにとって潤間さんは母親のような存在でもある。「母の日過ぎちゃったけど、お母さんありがとう」とおそろいの靴下とセーターを手渡した。「まぁ、うれしい」。潤間さんがプレゼントを抱きしめた。
潤間さんが、石巻を訪れるのは今回が最後になるかもしれないという。それでも2人は「絵手紙でつながっているから大丈夫」と終始笑顔で再会を楽しんだ。交流はこれからも続く。
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