防災学習 石巻・震災遺構「門脇小」、市内小中の利用低調 現地へのバス代が課題
石巻市の東日本大震災遺構「門脇小」を防災学習で利用する市内の小中学校が少数にとどまっている。新型コロナウイルスの5類移行に伴い、市外からの見学が増加する一方、市内小中で本年度に利用を申し出たのは計49校中7校のみ。移動に使う貸し切りバスの費用が課題で、教育関係者からは市に交通費の補助を望む声が上がっている。
門脇小は津波火災の痕跡を残す唯一の震災遺構で、2022年4月に開館した。市全体の被害状況などを伝える展示館もあり、教訓伝承を最大被災地の使命に掲げる斎藤正美市長は、震災遺構を「防災教育の拠点」に位置付ける。
初年度に教育旅行や校外学習で訪れたのは、全国の小学校から大学まで計67校。本年度は7月までに約50校が来館しており、利用は増加傾向にある。
一方で、市内小中の利用は前年度が7校。本年度も現状、利用申請は小学6校、中学1校にとどまる。
課題となっているのが現地までの交通費だ。徒歩移動が可能な近隣の学校以外は貸し切りバスを使う。大きさや移動時間、距離にもよるが、料金は1台数万円から10万円近くかかる。捻出するには保護者に負担を求めることになる。
学校側の声を受け、同市の公益社団法人「3.11メモリアルネットワーク」は、防災学習で門脇町地区を訪れる県内の学校にバス代を最大9万9000円助成している。運営する震災伝承施設「MEET門脇」に立ち寄ることが条件で、近隣の門脇小や石巻南浜津波復興祈念公園を合わせて訪問するケースが多い。本年度、市内では6校ほどから申請を受けた。
同市稲井小(294人)は、2年続けてメモリアルネットの助成制度を活用。今年は6月に4年生52人が門脇小を訪問した。高砂宏之校長は「内陸部で津波被害を受けていない家庭が多く、現地に足を運んで学ぶ機会は重要だ。バス代の負担は大きく、助成は助かる」と感謝する。
しかし、メモリアルネットの助成制度は資金面を理由に3年間の期限付きで、本年度までで終了する見通しだ。
市内の別の小学校校長は「現地に仲間と行き、学び合うことで理解が深まる。石巻の子どもたちが全員一度は門脇小を訪れ、学ぶ機会を設けるべきだ」と市にバス代の補助を求める。
市教委学校教育課の担当者は門脇小での防災教育の必要性は認めつつも「震災で家族を亡くすなど配慮が必要な子や家庭もある。学校と相談しながら在り方を検討していく」と語った。
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