いしのまき食探見 > タチウオ 脂乗る白身、料理も多彩
海と山とで育まれる豊かな石巻地方の食材。伝わる文化と技を生かした郷土の「食」を紹介する。
タチウオ
平たくすらりと長い銀色の魚体が市場に並ぶ。石巻地方で存在感を高めているタチウオが旬を迎えた。
暖水性の魚で西日本での漁獲が中心だったが、5年ほど前から県内での水揚げ量が爆発的に増加した。石巻市の石巻魚市場では2021年が約432トン、22年は約300トンを扱った。
魚市場の佐々木茂樹社長(65)は「水揚げが安定していて有望な魚種。総菜の開発に取り組んでいる水産加工会社もあるようだ」と期待を寄せる。
タチウオはデリケートな魚だ。うろこがなく、魚体が傷付きやすい。底引き網や定置網漁が一般的だが、同市鮫浦の阿部誠二さん(39)は引き縄漁で、傷が付かないよう1匹ずつ丁寧に釣り上げる。漁が盛んな九州に足を運び、技術を学んだ。
鮮度保持のため釣ってすぐに締め、船上で手早く梱包(こんぽう)まで済ませる。市場では、1キロ当たり7000円の高値で取引されることも。東京や九州などから引き合いがあるという。阿部さんは「石巻のタチウオが全国区になればいい」と意欲を語る。
白身ながら適度に脂が乗っているのが特長。地元のスーパーや飲食店での取り扱いも徐々に広がる。同市中央2丁目の和食店「夢屋」では仕入れに応じ、刺し身や炭火焼き、唐揚げなどで提供する。
店主の菅井盛将さん(58)は「石巻のタチウオは脂乗りがいい。おいしさに驚くお客さんもいる」と太鼓判を押す。
(奥山優紀)
<メモ>
漢字表記は「太刀魚」。銀色で細長い刀のような姿をしていることや、水中で立って泳ぐことなど、名前の由来は諸説あり。旬は8、9月ごろ。9月からトロール船が漁期に入り、流通量が増える見通し。漁師の阿部さんのお勧めの調理法は塩こうじ焼きや天ぷら。
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