発掘!古代いしのまき 考古学で読み解く牡鹿地方 >番外編 「復興と発掘調査」展、来月8日まで
【東北学院大博物館学芸員・佐藤敏幸氏】
講演会、分科会に参加を 28、29日
私の勤務する仙台市土樋の東北学院大博物館で「復興と発掘調査」展の「総合展示」が11月8日まで、開催されています。県考古学会と東北学院大学博物館が主催する展示会です。
2011年に発生したマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震と巨大津波は東日本に甚大な被害を出しました。最大の被災地である石巻地方でも震災の記憶をとどめる震災遺構保存関連施設が造られて、多数の方々の来館をえているところです。
震災から21年度までの10年間で県内では震災復旧・復興工事に伴う発掘調査が各地で実施されることとなり、それらの調査からはこれまで知られていない多くの発見がありました。
県考古学会は震災復興と発掘調査の成果を広く知ってもらうため、気仙沼市リアスアーク美術館、石巻市旧観慶丸商店で各地域の復興調査成果を紹介してきました。今回の「総合展示」は、仙台市や多賀城市をはじめとする県央部、気仙沼市、南三陸町、石巻市、女川町、東松島市の県北沿岸部、岩沼市、亘理町、山元町の沿岸南部の各地の調査成果を出土資料と写真・解説パネルで紹介しています。
石巻地域からは牡鹿半島の防災集団移転促進事業に伴う調査で縄文時代前期の大型建物が発見された中沢遺跡や、いろいろな石材で多種の石器が使われていた羽黒下遺跡、東松島市宮戸の海岸堤防復旧工事に伴う調査で平安時代初め頃の陸奥国府多賀城を支えた官営の塩づくり工房が発見された江ノ浜貝塚、女川町からは鎌倉時代から南北朝期の武士団が建立した仏教文化の象徴ともいえる松葉板碑群が取り上げられています。
宮城県のいにしえの歴史を体感できるとともに、10年間の復興の思いも感じることができる展示会になっています。足を運んで観覧してみてはいかがでしょうか。
さらに、展示会期間中の10月28、29日の土日には、日本考古学協会23年度宮城大会が東北学院大学土樋キャンパス・ホーイ記念館を会場に開かれます。一般社団法人日本考古学協会は日本最大の考古学の学会です。県内で開催されるのは30年ぶりになります。宮城大会のテーマは「災害と境界の考古学」です。
28日は文化庁主任調査官の近江俊秀さんによる「東日本大震災と埋蔵文化財保護」と東北学院大教授で日本考古学協会会長の辻秀人さんによる「古代東北研究のパラダイム」と題する2本の公開講演会があります。近江さんは石巻市出身の考古学者で、震災復興に文化庁調査官という立場で尽力いただいた方です。
29日は四つの分科会会場に分かれ、それぞれ「地域ごとの復興調査成果、自然災害に関する研究成果」「東北先史時代の越境と交流」「東辺地域の境界と律令国家の形成-古代城柵多賀城完成まで-」「宮城県を通して考えるアジア、世界との交流の考古学」というテーマで研究報告や議論が行われる予定です。
ここでも石巻地方に関連する研究が多く報告されます。私は第3分科会の「東辺地域の境界と律令国家の形成」の分科会長として運営に携わり、また石巻かほく「発掘! 古代いしのまき」の連載でお話ししてきた内容を専門的に報告する予定です。
両日とも学会員ばかりでなく一般の方も参加できますので、興味のある方はぜひご参加ください。詳細は一般社団法人日本考古学協会ホームページでご確認できます。
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