県議選 現職4氏の壁厚く 維新の風届かず小差で涙 選挙戦振り返る
22日投開票された県議選の石巻・牡鹿選挙区(定数4)=石巻市、女川町=は、混戦の末に現職4人が当選し、議席を守った。世代交代を掲げた新人は、組織力で勝り実績を強調する現職の壁に阻まれた。激戦の攻防を振り返る。(県議選取材班)
■目標得票超える
「厳しい戦いだと思っていた。得票を伸ばすことができ、感謝でいっぱいだ」。6選を決めた無所属現職の本木忠一(66)は22日夜、選挙事務所で息をついた。2015年に続く2度目の1位当選で、目標とする1万2000票も超えた。
前々回は自民党、民主党(現立憲民主党)が複数候補を立てたが、今回は両党とも単独候補。「地域を歩くと、相手が党の組織力で票を積み重ねているのをひしひしと感じた」と明かす。
それでも石巻市議時代を含め30年、地域を丹念に歩き、旧町地区にも支持の輪を広げた強みが選挙戦で生きる。各地の後援会組織が動き、小さな集落でも演説会に100人以上を動員するなど、戦いを盤石に進めた。本木は「強力な政党組織と伍(ご)して戦うことができた」と満足感を漂わせる。
■若者にアピール
現職側が警戒していたのは「維新の風」だった。市議を辞した新人佐藤雄一(44)が日本維新の会から立候補。ある現職は第一声で維新の地方選での躍進に触れ「本当に厳しい状況だ」と切実に呼びかけた。
佐藤は大阪府などでの維新の実績を強調。世代交代や身を切る改革を訴えた。党も代表馬場伸幸をはじめ知名度のある幹部を続々と投入した。蛇田地区の大型商業施設前での街頭演説や交流サイト(SNS)を通し、若い世代や無党派層にアピール。ある現職はその戦いぶりを「空中戦」と表現した。
当選には届かなかったが、194票の小差。佐藤は「自民への逆風からの票の伸びに期待したが…」と悔しさをにじませる一方、「新しい選択肢を提案することはできた」と手応えも語った。
「ここまで(佐藤に)詰められるとは思わなかった」。共産党現職の三浦一敏(73)は当選を決めた直後、本音をこぼした。
厳しい戦いは予想していた。維新を警戒し、支持者や党組織を引き締めた。中盤には「確信を持てるぐらいには(票が)ある」と自信をつかんでいたが、結果は薄氷の勝利。三浦は「県議会の現状に対する不満が新人に投票する流れを生んだ」と分析する。
唯一の自民党公認候補だった佐々木喜蔵(74)は1万票近くを集めて2位。「ただ一人の自民候補で、プレッシャーがかかる戦いだった」と振り返った。
旧市内を中心に選挙カーで遊説し、街頭演説よりも「党支持者を再確認することが大きなテーマ」と考え支持者回りに力を入れた。前々回より約1400票上積みし「投票率が下がった中で多くの票をもらった」と充実感を語る。
■パイプ役を強調
立民の坂下賢(61)は市長の斎藤正美の応援を受けた。「選挙の借りは選挙で返す」。事務所開きに駆けつけた斎藤は21年4月の市長選で立民の推薦をもらった恩義を語った。
県議を10期務めた父の清賢(故人)から引き継いだ地盤を守るが、支持者は高齢化し、後援会幹部も前々回とはがらりと入れ替わった。陣営は市との関係性を重視。市の要望を県政に届けるパイプ役を強調し、斎藤に近い若手市議らの支持を集めた。当選を決めた坂下は「支援の結集が勝利につながった」と感謝した。
選挙戦に初挑戦した元高校教諭で無所属新人の橋浦清紀(59)は、教員経験を生かして教育改革や農水産業の振興などを粘り強く訴えたが、広がりに欠けた。「全体的に甘かった。組織も戦い方も不十分だった」と話した。(敬称略)
◇県議選開票結果(選管最終)
当13545 本木 忠一 無現
当 9677 佐々木喜蔵 自現
当 8220 坂下 賢 立現
当 6876 三浦 一敏 共現
6682 佐藤 雄一 維新
2827 橋浦 清紀 無新
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